自己免疫疾患
自己免疫疾患は免疫系の不均衡によって生じ、免疫系が自己と非自己を識別できない状態となり1、最終的には免疫細胞が自己の組織を攻撃してしまいます2。自己免疫疾患の多くは慢性疾患であり、疾患の種類によっては、どの年齢でも発症する可能性があります1。病態は全身性のものから、特定の組織に特異的なものまであります2。 自己免疫疾患には約100種類の疾患があり、その中でも1型糖尿病は最も患者数が多い疾患です。その他には、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬などが含まれます。
自己免疫疾患のメカニズム
自己免疫疾患は、自己反応性T細胞の制御不全が関連していると考えられています。これらの細胞は健康な人でも胸腺で継続的に生じていますが、通常は成熟する前に排除されます1, 2。自己免疫疾患患者では自己反応性T細胞が生存・増殖することが、組織損傷や臨床症状を引き起こす一因となります3。
疾患の進行は段階的に起こり、発症開始(イニシエーション)、進展(プロパゲーション)、そして収束(レゾリュ―ション)といったフェーズを経て進みます。発症の開始は多くの場合無症候性ですが、進展フェーズは、サイトカイン産生に伴う炎症、エピトープの拡散、エフェクターT細胞と制御性T細胞(Treg 細胞)の不均衡が生じることが特徴です3。このバランスは、収束フェーズで回復することもありますが、エフェクターT細胞と制御性T細胞の免疫応答の拮抗状態が持続し、その結果、症状が長期化することが少なくありません3。
治療戦略
従来の免疫抑制薬は、全身の免疫応答を抑制することで作用します。高い有効性を有することから、現在も治療のゴールドスタンダードとされています1。しかし、これらの薬剤は重度の副作用を伴うことも多く、長期使用により、患者が日和見感染や悪性腫瘍を発症するリスクが非常に高まります1。こうした課題を背景に、より標的を絞った治療戦略として免疫療法が開発されてきました。免疫療法は病原性細胞を抑制する、あるいはそれらを制御する生体本来の免疫調節経路を強化することに焦点を当てています1。
生物学的製剤は、免疫系の主要な構成要素を標的とするもので、自己免疫疾患治療の選択肢を大きく広げてきました4。例えば、TNF-α 阻害剤は、RA、IBD、乾癬などの疾患において、炎症の軽減に日常的に使用されています5。ですが一部の患者では治療効果が得られない、あるいは有害事象により治療が継続できないことがあることから、がん免疫療法で成功を収めたアプローチを基に新たな治療戦略の研究開発が進められてきました5。これらの方法は、より特異的な免疫経路を標的とし、腫瘍関連抗原が存在する場合のみ免疫反応を誘導することから、現在では自己免疫疾患の治療にも応用されています5。
自己免疫疾患においてTreg細胞が果たす重要な役割は、複数の治療法の開発において現在も研究が進んでいます。その治療法の中で最も有望とされているのは、ポリクローナルに増幅したTreg細胞を1型糖尿病、皮膚エリテマトーデス、クローン病の患者に移入するアプローチです6。
このほかにも、共刺激遮断、抗原特異的免疫療法、IL-2経路の操作などにも関心が寄せられていますが、これらはすべてエフェクターT細胞と制御性T細胞の免疫機能のバランスの回復を目的とするものです1。
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参考文献
1. Rosenblum MD, Gratz IK et al. (2012) Treating human autoimmunity: current practice and future prospects. Sci Transl Med.
2. Wang L, Wang FS et al. (2015) Human autoimmune diseases: a comprehensive update. J Intern Med. 278(4):369-395. doi:10.1111/joim.12395
3. Rosenblum MD, Remedios KA et al. (2015) Mechanisms of human autoimmunity. J Clin Invest.125(6):2228-2233. doi:10.1172/JCI78088
4. Her M, Kavanaugh A. (2016) Alterations in immune function with biologic therapies for autoimmune disease. J Allergy Clin Immunol. 137(1):19-27. doi:10.1016/j.jaci.2015.10.023
5. (2019) Immunotherapies for autoimmune diseases. Nat Biomed Eng. 3, 247. https://doi.org/10.1038/s41551-019-0394-3
6. Dominguez-Villar M, Hafler DA. (2018) Regulatory T cells in autoimmune disease. Nat Immunol. 19(7):665-673. doi:10.1038/s41590-018-0120-4