ウイルス検体からRNA抽出
コンテンツの種類:アプリケーションノート
所属:Miami Cancer Institute(フロリダ州マイアミ)、ベックマン・コールター社ライフサイエンス(インディアナ州インディアナポリス)
ウイルス検体からのRNA抽出は、病原体研究の重要なステップです。ウイルス検体からのRNA抽出方法をここで具体的に説明いたします。
目的
ウイルス核酸の抽出は、RT-PCRによる下流ゲノム解析に関する最初のステップです。Miami Cancer Instituteがベックマン・コールター社ライフサイエンスと共同で実施した、RNAdvance Viral抽出キットを用いたスワブからのウイルス核酸抽出オペレーターズガイドに記載されているRNAdvance Viral研究試薬を用いて実施した研究調査を発表します。RT-PCRワークフローでRNAdvance Viral試薬を用いたウイルスRNA抽出の利用を例示します。発表するデータは、試薬の分析性能およびユニバーサル輸送培地投入物質から得たqRT-PCR Ct値を比較することによる競合他社の抽出キットに対抗する一致データを含みます。
ワークフローの概要
RNAdvance Viral試薬は、固相可逆的固定、すなわちSPRI技術を利用してRNAを単離する化学製品です。これは、200 μLまでの検体投入との実証された適合性を有する高度に精製されたRNAの生成を可能にします。24検体に関する抽出の手動測定には約1時間かかります。高度な処理能力を有する測定では、Biomek i5抽出ソリューションを用いて最小限の人との対話処理でプレート2枚(192検体)を1.75時間で測定することができます。The RNAdvance Viralワークフロー(図1)は、検体の溶解および結合-洗浄-溶離ステップから成ります。

発表するデータは、Miami Cancer Instituteにより単独で生成されました。
1. 分析性能の推定-感度
Exact Diagnostics社製SARS-CoV-2標準物質の陽性対照(RUO、EDX、cat# COV019)および陰性対照(EDX、cat# COV000))をプール陰性ユニバーサル輸送培地(HEALTHLINK、cat# 330C.DHI)に200、20、2および0.2コピー/μLで添加しました。ベックマン・コールター社製RNAdvance Viral試薬または別のビーズを用いた抽出キット(競合他社A)のいずれかを用いて、RNAを手動抽出しました。Integrated DNA Technologies(IDT)社製2019-nCoV RUOキットを用いてqRT-PCRアッセイを実施しました。
ウイルスRNAの検出には、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドのN1、N2およびN3の断片(N1、N2およびN3)を標的とする研究プライマーセットを用い、ヒトリボヌークレアーゼ(RNase)P RNAの検出には、RNase P(RP)プライマーセットを用い、qRT-PCRを介してCt値を評価しました。陽性対照の2019-nCoV_N_陽性対照(IDT:10006625)および qPCR陰性対照(NTC Ambion cat# AM4932)を含めて適切な検査対照を確保しました。回収効率対照には、抽出なしのExact Diagnostics社製RNA標準品(SARS-CoV-2標準物質)を用いました。
データは、Ct値がRNAdvance Viral試薬と競合他社Aの抽出キットとの間で同程度であることを示しました(表1)。RNAdvance Viral試薬を用いて抽出されたRNAもRNA標準品(抽出なしのSARS-CoV-2標準物質)と比較して一致したCt値を示しました。RNAdvance Viral試薬は、PCRを阻害することなく95%超の回収率を示しました。回収効率は、プライマーSARS-CoV-2 N1、SARS-CoV-2 N2およびSARS-CoV-2 N3に関し、すべてのウイルス力価でRNAdvance ViralのCt値/RNA標準品のCt値の計算式で算出しました。
分析性能は、PCR増幅を示すウイルスコピーの最低濃度として判定します。両方の抽出では、Exact Diagnostics社製RNA標準品の0.2コピー/μLが未確定のCt値を示し、分析性能が0.2~2コピー/μLであることを示しました。
| 検体名 | SARS-CoV-2 N1 | SARS-CoV-2 N2 | SARS-CoV-2 N3 | RP |
| 競合他社A_200 | 28.550 | 28.572 | 27.923 |
26.353 |
| 競合他社A_20 | 32.407 | 32.392 | 31.294 | 26.473 |
| 競合他社A_2 | 35.851 | 35.978 |
35.713 |
26.615 |
| 競合他社A_0.2 | 未決定 | 未決定 |
未決定 |
26.646 |
| RNAdvance Viral_200 | 28.775 | 28.633 |
27.891 | 26.346 |
| RNAdvance Viral_20 |
31.971 | 32.082 |
31.252 | 26.382 |
| RNAdvance Viral_2 |
35.126 | 35.680 |
35.979 |
26.409 |
| RNAdvance Viral_0.2 |
40.3239 | 未決定 |
38.065 | 26.364 |
| RNA標準品_200 | 27.676 | 28.147 |
27.201 |
27.976 |
| RNA標準品_20 |
31.178 | 31.530 | 30.527 |
31.472 |
| RNA標準品_2 | 35.491 | 34.925 |
35.033 |
35.102 |
| RNA標準品_0.2 |
未決定 | 37.801 | 36.253 |
37.458 |
表1. 抽出熟達度評価
2. 分析性能の確認
RNAdvance Viral試薬に関する推定ステップから得た分析性能(1コピー/μL)を確認するためにExact Diagnostics社製RNA標準品からRNAを抽出し、プール陰性ユニバーサル輸送培地に添加しました。RNA標準品の投入濃度は1/μLおよび2コピー/μLです。4連の検体を各投入濃度で測定しました。
CDC 2019 Novel Coronavirus (2019-nCoV) RT-PCR Diagnostic Panel instructions[米国疾病予防管理センター新型コロナウイルス(2019-nCoV)逆転写ポリメラーゼ連鎖反応診断パネル説明書(CDC-006-00019)]のアッセイ設定セクション記載のプロトコルを用いてqRT-PCRを介してCt値を評価しました。各検体に関してN1遺伝子、N2遺伝子、N3遺伝子およびRP遺伝子の検査を実施しました。さらに、RUO対照の2019-nCoV_N_陽性対照(IDT:10006625)およびqPCR陰性対照(NTC Ambion cat# AM4932)を含めることにより、適切な検査プロセスを確保しました。
RNA標準品の1コピー/μLおよび2コピー/μLは、共に同程度のCt値を示し(表2)、RNAdvance Viral試薬に関する分析性能が1コピー/μLであることを確認しました。
| 検体名 | SARS-CoV-2 N1 | SARS-CoV-2 N2 | SARS-CoV-2 N3 | RP |
| RNAdvance Viral_2-1 |
34.443 | 34.892 | 33.656 |
26.408 |
| RNAdvance Viral_2-2 |
34.933 | 35.403 | 34.420 | 26.579 |
| RNAdvance Viral_2-3 |
34.627 | 35.489 |
34.272 |
26.405 |
| RNAdvance Viral_2-4 |
35.304 | 34.912 |
34.493 |
26.697 |
| RNAdvance Viral_1-1 |
34.314 | 35.901 |
34.785 | 27.612 |
| RNAdvance Viral_1-2 |
35.781 | 36.520 |
36.592 | 27.659 |
| RNAdvance Viral_1-3 |
34.966 | 36.637 |
34.827 |
27.611 |
| RNAdvance Viral_1-4 |
35.550 | 34.625 |
35.730 | 27.757 |
表2. RNAdvance Viral試薬分析性能の確認
3. 検体の一致
検体の一致は、競合他社Aを用い、過去に検査を実施した抽出RNA検体のCt値を比較して示しました。Ct値40未満で既知のSARS-CoV-2陽性検体が24個で、既知のSARS-CoV-2陰性検体が23個でした(表3)。すべての検体がCOPANスワブで採取され、抽出前にHEALTHLINKユニバーサル輸送培地に保管されました。すべての検体のRNAは、RNAdvance Viral試薬を用いて手動で抽出しました。RT-PCRアッセイは、N2およびRPのプライマー/プローブセットで実施しました。2019-nCoV_N_陽性対照(IDT: 10006625)およびqPCR陰性対照(NTC Ambion、cat# AM4932)を含むことにより適切な試験手順を確保しました。
データは、すべての陽性検体に関して100%の一致を示しました。ただし、過去に陰性であった検体23個中1個が陽性であり、96%の一致率を示しました。オペレータは、これを検体取り扱いエラーと記載しました。
| 検体種 | 検体番号 | Ct値40未満の数量/合計数 | 一致した数/合計数 |
| 既知の陽性 | 24 | 24/24 | 24/24 |
| 既知の陰性 | 23 | 1/23 | 22/23 |
表3. 既知のSARS-CoV-2陽性検体およびSARS-CoV-2陰性検体のCt値および比較性能
結論
この評価は、研究用ユニバーサル輸送培地に採取したスワブ検体からの信頼度の高いウイルスRNA単離用抽出ソリューションを具体的に悦明しています。発表するデータは、RNAdvance Viralの抽出効率が95%超で下流qRT-PCR測定を阻害しないことを示しています。分析性能は1コピー/μLのウイルスRNAと同様の低い濃度です。既知の陽性検体および既知の陰性検体で示された検出の一致は、それぞれ100%および96%で、競合他社のキットで抽出したRNAのCt値と比較して正確度は約98%です。生成された評価データは、ユニバーサル輸送培地のスワブ検体からのRNA抽出に関してRNAdvance Viral試薬の使用を可能にしています。
製品情報:ウイルスRNA抽出試薬キット
|
RNAdvance Viral試薬キット-768個 |
RNAdvance Viral XP試薬キット-1056個 |
究に用いられるものであり、診断を目的にはしていません。
関連のオンラインセミナー
ウイルスRNA抽出試薬キットをフィーチャーしたqPCR検体調製のためのソリューションに関するベックマン・コールター社ライフサイエンスとIntegrated DNA Technologies(IDT))の共同研究をご覧ください。
1Qi Wei、Ph.D.、1Weiming Shen、MS、ASCPCM、1Haixue Gan、1Dianelis Mondejar Alvarez、1Mendizabal、1Tania E. Pumariega、2Cindy Heath、2Han Wei、Ph.D.
所属:1Miami Cancer Institute(フロリダ州マイアミ)、2ベックマン・コールター社ライフサイエンス(インディアナ州インディアナポリス)

ベックマン・コールター社は、特定目的適合性もしくは商品性の保証、またはプロトコルが非侵害性であることなど(これらには限定されません)、本プロトコルに関して明示または黙示を問わずにいかなる種類の保証もしません。すべての保証は明示的に排除されます。あなたは、ベックマン・コールター社に頼らずに自らの責任により本方法を使用します。病気その他の症状の診断での使用を目的としたものではなく、検証もされていません。本プロトコルはデモンストレーションのみのためであり、ベックマン・コールター社は検証しておりません。
© 2020 Beckman Coulter, Inc. 無断転載禁止。ここに掲載されたベックマン・コールター社、そのロゴ、製品の名称およびマーク等は、米国その他の国においてBeckman Coulter, Inc.の商標または登録商標です。その他の商標はすべてそれぞれの所有者の財産です。

