SPRIselect DNAサイズセレクション プロトコル
DNAサイズセレクション は、様々な長さのDNA断片を含むサンプルから特定のサイズのDNA断片を取得するアプリケーションです。
分子生物学やゲノム解析の様々な用途で用いられ、特に 次世代シーケンシング(NGS)ライブラリ調製 の重要なステップです。各NGSライブラリには、最も効率的にシーケンスできる最適なDNA断片サイズレンジがあるからです。DNA断片がこの範囲内に収まるようにすることで、シーケンスデータの品質、精度、効率を最大限に高めることができます。
以下のプロトコルでは、SPRI磁性ビーズ技術を用いた製品SPRIselectを使用した、レフトサイド/ライトサイド/ダブルの各DNAサイズセレクションについて説明します。このプロトコルは対話式で、サンプル量と、希望するDNA断片サイズレンジを指定すると、自動で計算を行います。
注: DNAサイズセレクションに弊社の AMPure XPを使用することを推奨するメーカーもありますが、弊社ではその性能保証やこのアプリケーションのサポートはできません。SPRIselectは、各ロットで正確かつ再現性の高いDNA サイズセレクションができることを検証しています。AMPure XPとSPRIselectの違いについては、こちらのページをご覧ください。
- マグネットスタンドまたはプレート
- 85% エタノール(非変性)
- 水(分子生物学グレード)またはDNA溶出用のTris(10 mM、pH 8.0)、TE(10 mM Tris、pH 8.1 mM EDTA)などのバッファー
- サンプルは断片化した二本鎖DNAです。
- サンプルは分子生物学グレードの水、またはTrisやTEなどの緩衝液に溶解します。
- サンプル液量は50 μL 以上を推奨します。液量が少ないと、ピペッティング精度が低下し、サイズのばらつきが大きくなります。
- 150~800 bp の範囲でサイズセレクションをすることができます。
- レフトサイドセレクションで回収率を最大にするには、サンプルのサイズ分布の大部分がセレクションポイントより大きい必要があります。
- ライトサイドセレクションで回収率を最大にするには、サンプルのサイズ分布の大部分がセレクションポイントより小さい必要があります。
- ダブルサイズセレクションで回収率を最大にするには、サイズ分布がセレクションポイントの中央に来るようにします。
この方法では、ターゲットサイズより短いDNA断片が除去されるため、より大きな断片の選択が可能になります。
レフトサイドセレクションでは、まずサンプルにSPRIselectを加えて混合します。最小ターゲットサイズより長いDNA断片はSPRIビーズに結合し、残りのDNA断片は溶液中に残ります。
その後、溶液をマグネット上に置き、上清(短いDNA断片)を取り除く。次のステップでは、磁性ビーズをエタノールで洗浄し、水または標準バッファー溶液で溶出します。
AAサンプル容量に対するSPRIselect試薬容量の比率(ビーズ比率)を上げると、より小さなDNA断片が回収できます。以下のグラフは、この関係を示しています。
Agilent High Sensitivity DNA Chipによる電気泳動。M はマーカーDNA、ShearはコントロールDNA溶液 20 ng/μLを1 μL、1.2xから0.4xまでについては、shear 1 μLをサンプルとして各条件でサイズセレクションを行っています。
対話型プロトコル
レフトサイドセレクションプロトコルを条件に合わせて調整するには、以下の対応するフィールドにサンプル容量とサイズセレクションするDNA断片の最小サイズを指定してください。プロトコルを自動的に計算します。
プロトコル計算結果
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SPRIselectのボトルを十分に振り、SPRI磁性ビーズを再懸濁します。 μLのサンプルに μL のSPRIselect試薬を加えます。
計算
計算式: SPRIselect容量 = サンプル容量 x ビーズ比率
今回のプロトコル SPRIselect容量 = μL × = μL
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ピペッティングで10回混合し、室温で1分間静置するか、適切な速度で均一になるまで1分間ボルテックスします。
注意: を超える長さのDNA断片が磁性ビーズにに結合します。それより短いDNA断片は溶液中に留まります。
結果: bpを超える長さのDNA断片が磁性ビーズにに結合します。それより短いDNA断片は溶液中に留まります。
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反応容器を適切なマグネットスタンドまたはプレートの上に置き、SPRI磁性ビーズをマグネットに集めます。最初のサンプル容量が多い場合、ビーズ比率が高い場合、マグネットが弱い場合は、マグネットに集まるまでの時間が長くなります。十分に磁性ビーズが集まったら、上清を取り除きます。
注意:標的のDNA断片は磁性ビーズと結合しているため、可能な限り磁性ビーズを吸引しないよう注意してください。磁性ビーズをロスすると、収量が減少します。
結果: bpを超える長さのDNA断片がSPRIselectに結合します。それより短いDNA断片は除去されました。
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Wサンプルをマグネットに置いたまま、85%エタノール 180 μLを加え、30秒間静置し、上清を除去します。
注意:標的のDNA断片は磁性ビーズと結合しているため、可能な限り磁性ビーズを吸引しないよう注意してください。磁性ビーズをロスすると、収量が減少します。
結果: bp 以上のDNA断片と結合したSPRIselectを洗浄しました。
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サンプルを溶出します:
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サンプルをマグネットから下ろし、分子生物学グレードの水またはTrisやTEなどのバッファー 20 μL以上加える。
注意: 溶出液量は、磁性ビーズがマグネットで分離可能な十分量を入れてください。
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ピペッティングで10回混合し、室温で1分間静置するか、適切な速度で均一になるまで1分間ボルテックスします。
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反応容器を適切なマグネットスタンドまたはプレートの上に置き、SPRI磁性ビーズをマグネットに集めます。溶出液量が多い場合、マグネットが弱い場合は、マグネットに集まるまでの時間が長くなります。
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サイズセレクションされた溶出液(上清)を適切な保存容器に移します。
結果: bp以上のDNA断片を含む溶出液が得られました。
この方法では、ターゲットサイズより長いDNA断片が除去されるため、より小さな断片の選択が可能になります。
ライトサイズセレクションのワークフローは、レフトサイズセレクション(上記参照)よりも長くなります。SPRIselectをサンプルに加え、混合し、マグネットに置くことから始まります。しかし、その後、上清(磁性ビーズではない)を回収し、最大ターゲットDNAサイズよりも短いDNA断片を回収する必要があります。
N次に、この上清にさらにSPRIselect試薬を加え、プライマー、アダプター、プライマーダイマーなど、100 bp以下の短いDNA断片を取り除くために、レフトサイズセレクションを行います。最後のステップでは、磁性ビーズをエタノールで洗浄し、水または緩衝液で溶出します。
サンプル容量に対するSPRIselect試薬容量の比率(ビーズ比率)を上げると、より大きなDNA断片が回収されなくなります。以下のグラフは、この関係を示しています。
Agilent High Sensitivity DNA Chipによる電気泳動。M マーカーDNA、ShearはコントロールDNA溶液 20 ng/μLを1 μL、1.2xから0.4xまでについては、shear 1 μL をサンプルとして各条件でサイズセレクションを行っています。
対話型プロトコル
ライトサイドセレクションプロトコルを条件に合わせて調整するには、以下の対応するフィールドにサンプル容量とサイズセレクションするDNA断片の最大サイズを指定してください。プロトコルを自動的に計算します。
プロトコル計算結果
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SPRIselectのボトルを十分に振り、SPRI磁性ビーズを再懸濁します。 μLのサンプルに μLの SPRIselect 試薬を加えます。
計算
計算式:SPRIselect 1 容量 = サンプル容量 x ビーズ比率
今回のプロトコル: SPRIselect 1 容量 = μL × = μL
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ピペッティングで10回混合し、室温で1分間静置するか、適切な速度で均一になるまで1分間ボルテックスします。
注意:サンプルとSPRIselectの混合が不十分な場合、サイズセレクションの結果にばらつきが生じます。十分に混合してください。
結果: bp以下のDNA断片は溶液中に留まります。それより長いDNA断片は磁性ビーズに結合する。
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反応容器を適切なマグネットスタンドまたはプレートの上に置き、SPRI磁性ビーズをマグネットに集めます。最初のサンプル容量が多い場合、ビーズ比率が高い場合、マグネットが弱い場合は、マグネットに集まるまでの時間が長くなります。十分に磁性ビーズが集まったら、上清を取り除きます。
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bp以下のDNA断片を含む上清を、新しい反応容器に移します。 bp以上のDNA断片を含む磁性ビーズが残った反応容器は以降実験に使用しません。
注意:可能な限り磁性ビーズを吸引しないよう注意してください。磁性ビーズを持ち込むと、大きなサイズの領域にテーリングが生じます。
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ステップ4の上清にSPRIselect μL を加えます。
計算
計算式: SPRIselect 2 容量 = 最初のサンプル量 x (1.8 - ビーズ比)
今回のプロトコル: SPRIselect 2 容量 = μL × (1.8 - ) = μL
結果:100 ー bp のDNA断片が磁性ビーズに結合します。100 bp以下の短い断片は上清に留まります。
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以下の操作を行います:
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ピペッティングで10回混合し、室温で1分間静置するか、適切な速度で均一になるまで1分間ボルテックスします。
注意:サンプルとSPRIselectの混合が不十分な場合、サイズセレクションの結果にばらつきが生じます。十分に混合してください。
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反応容器を適切なマグネットスタンドまたはプレートの上に置き、SPRI磁性ビーズをマグネットに集めます。最初のサンプル容量が多い場合、ビーズ比率が高い場合、マグネットが弱い場合は、マグネットに集まるまでの時間が長くなります。
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十分に磁性ビーズが集まったら、上清を取り除きます。
注意:標的のDNA断片は磁性ビーズと結合しているため、可能な限り磁性ビーズを吸引しないよう注意してください。磁性ビーズをロスすると、収量が減少します。
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反応容器をマグネットの上に置いたまま、85%エタノール 180 μLを加え、30秒間静置し、上清を除去する。
注意:標的のDNA断片は磁性ビーズと結合しているため、可能な限り磁性ビーズを吸引しないよう注意してください。磁性ビーズをロスすると、収量が減少します。
ステップ結果:100— bpのDNA断片を結合した磁性ビーズを洗浄した。
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サンプルを溶出します:
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サンプルをマグネットから下ろし、分子生物学グレードの水またはTrisやTEなどのバッファー20 μL以上加える。
注意:溶出液量は、磁性ビーズがマグネットで分離可能な十分量を入れてください。
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ピペッティングで10回混合し、室温で1分間静置するか、適切な速度で均一になるまで1分間ボルテックスします。
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反応容器を適切なマグネットスタンドまたはプレートの上に置き、SPRI磁性ビーズをマグネットに集めます。溶出液量が多い場合、マグネットが弱い場合は、マグネットに集まるまでの時間が長くなります。
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サイズセレクションされた溶出液(上清)を適切な保存容器に移します。
結果: 100— bpのDNA断片を含む溶出液が得られました。
ダブルサイズセレクション
この方法では、特定のサイズ範囲内のDNA断片をセレクションします。
ダブルサイズセレクションのワークフローは、ビーズの比率が異なるだけで、ライトサイドサイズセレクション(上記参照)と同じです。まず、サンプルにSPRIselectを加えて混合し、マグネット上に置きます。次に、(磁性ビーズではなく)上清を回収し、最大ターゲットDNAサイズより短いDNA断片を取得します。
次に、この上清にさらにSPRIselectを加え、レフトサイドセレクションを行い、最小ターゲットDNAサイズより短いDNA断片を取り除きます。最後に磁性ビーズを85%エタノールで洗浄し、水またはバッファーで溶出します。
ターゲットサイズ以上の長いDNA断片の除去に使用する SPRIselect液量とサンプル液量の比率(ライトサイズセレクションの磁性ビーズ比率)は、短いDNA断片の除去に使用するビーズ磁性比率(レフトサイズセレクションの磁性ビーズ比率)より常に小さい必要があります。下のグラフはこの関係を示しています。
Agilent High Sensitivity DNA Chipによる電気泳動。M はマーカーDNA、Shear はコントロールDNA溶液 20 ng/μLを1 μL、各条件については、shear 1 μL をサンプルとしてサイズセレクションを行っています。
対話型プロトコル
ライトサイドセレクションプロトコルを条件に合わせて調整するには、以下の対応するフィールドにサンプル容量とサイズセレクションするDNA断片の最大サイズを指定してください。プロトコルを自動的に計算します。
プロトコル計算結果
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SPRIselectのボトルを十分に振り、SPRI磁性ビーズを再懸濁します。 μLのサンプルに μLの SPRIselect 試薬を加えます。
計算
計算式: SPRIselect 1 容量 = サンプル容量 x ビーズ比率
今回のプロトコル: SPRIselect 1 容量 = μL × = μL
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ピペッティングで10回混合し、室温で1分間静置するか、適切な速度で均一になるまで1分間ボルテックスします。
注意:サンプルとSPRIselectの混合が不十分な場合、サイズセレクションの結果にばらつきが生じます。十分に混合してください。
結果: bp以下のDNA断片は溶液中に留まります。それより長いDNA断片は磁性ビーズに結合します。
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反応容器を適切なマグネットスタンドまたはプレートの上に置き、SPRI磁性ビーズをマグネットに集めます。最初のサンプル容量が多い場合、ビーズ比率が高い場合、マグネットが弱い場合は、マグネットに集まるまでの時間が長くなります。十分に磁性ビーズが集まったら、上清を取り除きます。
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bp以下のDNA断片を含む上清を、新しい反応容器に移します。 bp以上のDNA断片を含む磁性ビーズが残った反応容器は以降実験に使用しません。
注意:可能な限り磁性ビーズを吸引しないよう注意してください。磁性ビーズを持ち込むと、大きなサイズの領域にテーリングが生じます。
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ステップ4の上清にSPRIselect μL を加えます。
計算
計算式: SPRIselect 2 容量 = 最初のサンプル量 x (1.8 - ビーズ比)
今回のプロトコル: SPRIselect 2 容量 = μL × ( - ) = μL
結果: — bpのDNA断片が磁性ビーズに結合します。 bp以下の短い断片は上清に留まります。
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以下の操作を行います:
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ピペッティングで10回混合し、室温で1分間静置するか、適切な速度で均一になるまで1分間ボルテックスします。
注意:サンプルとSPRIselectの混合が不十分な場合、サイズセレクションの結果にばらつきが生じます。十分に混合してください。
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反応容器を適切なマグネットスタンドまたはプレートの上に置き、SPRI磁性ビーズをマグネットに集めます。最初のサンプル容量が多い場合、ビーズ比率が高い場合、マグネットが弱い場合は、マグネットに集まるまでの時間が長くなります。
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十分に磁性ビーズが集まったら、上清を取り除きます。
注意:標的のDNA断片は磁性ビーズと結合しているため、可能な限り磁性ビーズを吸引しないよう注意してください。磁性ビーズをロスすると、収量が減少します。
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反応容器をマグネットの上に置いたまま、85%エタノール 180 μL反応容器をマグネットの上に置いたまま、85%エタノール 180 μL
注意:標的のDNA断片は磁性ビーズと結合しているため、可能な限り磁性ビーズを吸引しないよう注意してください。磁性ビーズをロスすると、収量が減少します。
結果: bpのDNA断片を結合した磁性ビーズを洗浄した。
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サンプルを溶出します:
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サンプルをマグネットから下ろし、分子生物学グレードの水またはTrisやTEなどのバッファー20 μL以上加える。
注意:溶出液量は、磁性ビーズがマグネットで分離可能な十分量を入れてください。
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ピペッティングで10回混合し、室温で1分間静置するか、適切な速度で均一になるまで1分間ボルテックスします。
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反応容器を適切なマグネットスタンドまたはプレートの上に置き、SPRI磁性ビーズをマグネットに集めます。溶出液量が多い場合、マグネットが弱い場合は、マグネットに集まるまでの時間が長くなります。
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サイズセレクションされた溶出液(上清)を適切な保存容器に移します。
結果: bpのDNA断片を含む溶出液が得られました。
その他の注意事項
グリセロール、MgCl2、ポリエチレングリコール、エタノールなど、サンプルに含まれるさまざまな添加物やpHなどの要因が、サイズセレクションの結果に影響を与えることがあります(詳細については、以下のSPRIselectユーザーガイドを参照してください)。また、サイズセレクションの結果は、扱う液量によっても異なります。液量が少ないほど、ばらつきは大きくなります。したがって、上のプロトコルで計算された容量を出発点として考慮しながら、適時調整することをお勧めします。
液体分注のばらつきを減らしたい場合や、サイズセレクションのスループットを上げたい場合には、自動化について考える必要があります。記載のサイズセレクションプロトコルは、弊社Biomek i-Series自動分注機で簡単に自動化することができます。
ご質問ございましたらフォームにご記入の上、弊社スペシャリストまでお問い合わせください。
ベックマン・コールターは、特定目的への適合性、商品性、またはプロトコルが非侵害であることを含むがこれに限定されない、本プロトコルに関する明示または黙示のいかなる保証も行いません。すべての保証は明示的に否認されます。本メソッドの使用は、ベックマン・コールター社に頼ることなく、あなた自身の責任においてのみ行うものとします。病気やその他の状態の診断に使用することを意図したものでも、検証されたものでもありません。このプロトコールはデモンストレーションのためのものであり、ベックマン・コールターによって検証されたものではありません。