エクソソームにより疾患モデルを新たなレベルに:ケージからプレートへ

これまで、疾病過程を研究するために一般的に使用されてきた手法では、タンパク質発現における変化を見るため、動物モデルを生成し、組織と生化学を解析してきましたが、細胞生物学における小さな発展が疾病に対する見方と研究方法に大きな影響を与えました。  エクソソームは細胞間および細胞周辺の間質液に放出される径の小さな(<120nm)膜結合性小胞です。  エンドソームから採取され、血漿膜に融合されるという形成の過程のため、エクソソームには起始細胞から抽出されたDNA、RNA、タンパク質の標本(細胞表面マーカーなど)が含まれています。1通常リキッドバイオプシーから採取してエクソソームを単離することにより、エクソソームの成分である高分子化合物を解析し、起始細胞、臓器、または有機体の健康状態について判断することができるようになります。2つまり、マウスの腎臓を採取し、連続切片またはウエスタンブロット法を行い、疾病の表現型マーカーで染色する代わりに、疾病固有の細胞株を培養し、改良した細胞培地からエクソソームを単離し、その中に存在するタンパク質、DNA、RNAの特性を明らかにすることができます。3エクソソームを調べることで、より多くの情報を引き出すことができ、低コストでヒトと関連した疾病固有の情報を得られます。 

疾病におけるエクソソーム

エクソソームがほとんどの健康なヒトの細胞から放出されるのと同様に、不健康でストレスを受けた疾病のある細胞からも放出されます。  したがって、これらの細胞が放出するエクソソームに含まれる内包物は、不健康でストレス下にあり、または疾病状態を反映しています。  実際、リキッドバイオプシーにより、特定の疾病を患う患者の循環エクソソームには異常型タンパク質4-6や疾病促進核酸7, 8が含まれる可能性があることが明らかになっています。また、エクソソームが輸血されることにより、有機体から有機体へこれらが伝染されることも証明されています。6

健康体から疾病体への移行中、エクソソーム放出量は増え、エクソソーム内に存在する成分である高分子化合物は、疾病負荷9, 10の恒常性変化を反映して変わります。11細胞内ナトリウムの増加により発生する現象は細胞への負荷を近くの細胞に知らせようとするものです(または、そのように見えます)。したがって、既知の病理細胞または組織からエクソソームを単離し、特性化することにより、これらの細胞による情報伝達の生物学的機能だけではなく、これまでは不明だった治療対象の特定に光を当てることができます。12

生体外で疾病情報を得る

患者から採取した体液標本(尿、唾液、血液など)を使って直接行われるエクソソームを使った疾病研究もありますが、さまざまな疾病のエクソソームの特性を解析する方法もあります。  培養される細胞株は、エクソソームを培地に放出することが証明されており、細胞株から抽出されるエクソソームと患者から採取されるエクソソームが、同様の診断に導くという同等性を指摘しています。13-17特定の疾病を持つ患者から採取した細胞株は時間が経ってもそのエクソソーム特性を維持し、同じ構成のエクソソームを一貫して放出すると思われます。  いくつかの疾病患者から採取されたエクソソームは特性化されており、18-23細胞株が放出するエクソソームから、リキッドバイオプシーで採取されたエクソソームへの外挿を可能にし、非侵襲的/低侵襲的体液標本を疾病のエクソソームバイオマーカー診断検査として使用することができるようになります。

細胞株は、通常、外科的生検組織採取または疾病組織の切除という手段により、組織標本から採取されます。疾病固有の細胞株は腫瘍細胞の自然発生的な不死化により、長期間培養の中で生存し続けることができますが、細胞で発がん遺伝子(E1Aなど)の発現を誘導することによりラボで不死化させることもできます。 通常または健康な細胞株はこのようにして作られます。 一方、一次細胞株は不死ではなく、数回分裂すると細胞が老化または死滅してしまいます。このため、一次細胞株は調製段階で適切に制御したりレプリケートしたりすることができず、培養研究におけるエクソソームの再現可能な試料源には不向きです。 最も解釈可能なデータを得るための最良事例では、疾病状態のみがエクソソームプロファイルに影響を及ぼすよう、黒色腫細胞株から生成されたエクソソームとメラニン細胞株(大腸がん細胞株ではなく)から生成されたエクソソームの比較など、十分に類似した細胞株を比較しています。 

さまざまな分子生物学やゲノム編集技術を使って、既存の細胞株の遺伝子を組み替え、そのエクソソーム内包物を改良したり、特定したりすることにより、遺伝子を組み替えた細胞株を使ってエクソソームを生成することもできます。  遺伝子を組み換え細胞株を使ってカスタマイズしたエクソソームを生成した例には、発光タンパク質や生物発光タンパク質をコンジュゲートし、エクソソームを調べることでタンパク質やDNA、RNAの内包物シーケンスを追跡・改良し、エクソソームの機能をダウンストリーム研究したものがあります。24

表現型解析:マーカーマジック

エクソソームの産生および単離は、生体外で疾病を特性化する最初の手順に過ぎません。  それ以降の手順では、さまざまな表現型マーカーを使い、単離したエクソソームを特性化し、エクソソームの起始細胞を確認したり、疾病状態にある細胞株のプロファイルと通常状態にある細胞株のプロファイルの違いを比較していきます。  エクソソームのプロファイル特性化で使用される表現型マーカーは、エクソソームの脂質二重膜や小胞コンパートメントに存在するタンパク質を認識する抗体です。 

エクソソームの分類上の所属を確認できる一連のマーカーについて共通合意はありませんが、いくつかのマーカーはエクソソームを特定するために使用されています。  CD9、C81、MHCクラス2は、エクソソームの特定に一般的に使用されているマーカーです。  また、エクソソームの生物発生に無関係な、起始細胞から抽出したGM130と カルネキシンでは、陽性の微小小胞体を除外することによってもエクソソームを特定することができます。  特定の起始細胞では、系統や細胞株固有のマーカーでエクソソームを染色して、放出元の細胞の種類を具体的に特定することもできます。

表現型特定されたエクソソームを分析する際に、一般的に使用されるのはイメージングフローサイトメトリー法です。これは、エクソソームの径や形を確認することができますが、エクソソームは免疫蛍光や電子顕微鏡、ウエスタンブロッティング、ELISAにより解析することもできます。  ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用してエクソソームの核酸コンパートメントを特性化することもできます。

細胞株から抽出したエクソソームを用いた疾病特性化には、高い情報量や低コスト、ヒトの疾病への直接的な適用可能性など、従来の疾病状態解析方法に比べていくつかの利点があります。  疾病研究におけるエクソソームについてのさらなる情報は、薬物送達のためのナノ物質としてのエクソソームについての記事をお読みください。

参考文献:

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