エクソソーム:がん研究を前進させる 一度に最大100nm

Fredrik Vannberg

Fredrik Vannberg教授がエクソソームについて語りだすと、かつては見過ごされてきた存在であった微小胞とそのがん治療における潜在的役割に対する教授の熱意を感じずにはいられないでしょう。Vannberg教授の専門は疾病遺伝子で、免疫反応中のエクソソームの役割に関する最近の論文では、これらの粒子を使って新しい治療薬をがん患者のリンパ節に送達する可能性について光を当てています。

本質的に、がん細胞から放出されるエクソソームはミクロ環境に影響し、腫瘍細胞の増殖を促進しています。体の免疫反応が抑制され、これにより、腫瘍認識能力や関連する抗腫瘍機能が低下します。 

Vannberg博士とその研究チームは、最近発表した論文の中で、免疫システムで刺激された細胞に由来するエクソソームはリンパ系にがんの発現などメッセージを素早く伝えることができることを証明しています。「治療薬をどのように送達するかという問題において、これは重要な点です」と、博士。「エクソソームを改良し、リンパ節に治療薬を素早く送達することができるかもしれません。」   

「エクソソームはどれも同じに見えますが、その由来によりそのエフェクター効果は異なります。」

博士は、エクソソームがリンパ系と循環系の両方を介して、体内の離れた場所に情報を伝えることができるというエクソソームの数ある興味深い特性のうちの1つについて説明しました。研究者は、エクソソームが放出される細胞によって役割が異なることに少し前から気が付いていました。重要なのは、良性エクソソームと悪性エクソソームを見分けることで、これを行うには、その内包に何が含まれているかを深く理解することが重要です。研究は大きく進展していますが、複雑な疾病の治療にエクソソームが果たせる役割について理解するには、さらなる研究が必要です。

イッツ・ア・スモールワールド

径100nm未満の微小粒子を使ってがんなどの難しい病気を治療するのは、特に、研究のためにエクソソームを単離する際の難しさを考えると、決して「小さな」偉業ではありません。エクソソームの精製にはいくつかの方法があり、Vannberg博士と研究チームはそれらの多くを試してみました。最終的に、超遠心法という従来から使用されてきた方法を選択し、その理由として、「一貫性、純度、回収において、最良のアプローチ」と述べています。

「これらのナノ粒子をいかに精製するかは、重要な問題です。」と、博士。「血清や血液を始めとする体液にはさまざまなナノ小胞や微小胞が膨大に含まれています。超遠心法を使うことにより、エクソソームより若干径の大きい微小胞からエクソソームを単離し、回収するエクソソームの純度を上げることができます。また、他の手法では実現できない回収量を超遠心法で達成することができると考えています。」

しかし、研究のためにエクソソームを回収する方法自体は、Vannberg博士らの研究目的ではありません。エクソソームが疾病治療方法に革命を及ぼす可能性こそ、博士が熱意を持って目標としていることです。実際、博士は、エクソソームを用いた治療における大きなブレークスルーが近い将来必ず起こると確信しています。

「エクソソームががんだけではなく、世界で進化し続けている他の病原体を標的とする方法を発見する取り組みの一部であることを嬉しく感じています。」と、博士は言います。「エクソソームを使って、エボラ熱やジカ熱、その他の感染症の原因となる可能性のあるウィルスを標的とすることができるかもしれません。」 「それができたら、極めて大きな前進となるでしょう。」

お問い合わせ