エクソソームの単離の簡易化

分子モデルエクソソーム単離には分画超遠心分離法が一般的に使用されています。1その理由は、この手法が広く採用されていることと、この分離方法により極めて純度の高いエクソソームが得られるためです。複雑な単離作業および特性化ワークフローを自動化することにより、作業者の手間と実験毎のばらつきを最小限に抑えながら所要時間を短縮し、精度を向上することができます。一見単純な作業にもかかわらず、速度と回転数は多様で、ワークフローにも数多くの手順があり、手作業による方法で標準化するのは問題があるかもしれません。単離したエクソソームの価値や、導出されるデータの質を向上するために、液体の取り扱い作業自動化により、再現性、トレーサビリティ、精度を確保します。作業自動化がどのように解析を深め、ダウンストリームでの柔軟性を高め、経時的およびさまざまな条件下におけるエクソソーム内包物の小さな変化をより正確に特定することができるようになるかについて説明します。 

細胞を対数期まで増殖させる

注意:開始検体がリキッドバイオプシーから採取した生物流体である場合、この注意書きは読み飛ばして構いません。

ほとんどのラボでは、細胞を対数期まで増殖させています。これに必要なのは少しの追加の時間と血球計算盤のみです。したがって、より注意が必要なのは対数期まで細胞を増殖させることではなく、対数期まで増殖させる前に細胞板を形成することです。多くの場合、科学者が細心の注意を払っても、血球計算盤で得られる細胞数は、凝縮、不均一な混合物、不適切な計算など、さまざまな変数によりデータが偏る可能性があります。細胞密度のエラーによりエクソソームの単離が最初から失敗してしまわないよう、信頼できる細胞カウンタと細胞播種用液体自動処理を使用することで、日常のラボ業務を手作業で行っていたのでは達成できない精度と標準化を達成することができます。 

過少または過剰に播種された細胞は、対数期の細胞増殖を見逃さないよう、分光光度器を用いて慎重に監視する必要があります。また、正しく計算されなかった細胞で播種された細胞板では、同時にエクソソームを採取することはできない可能性があります。予測可能な密度で播種された細胞は、予測可能な時間で対数期に到達するため、アッセイをスケジュール通りに進めることができます。付着性哺乳動物細胞を扱う場合、複数の同時培養が通常増殖され、実験細胞を妨害することなく、分光測光器で増殖期を測定することができます。細胞播種方法を標準化できるという明らかな利点以外にも、扱っている細胞の標準的な増殖特性を知ることで、細胞に起きる問題や培養条件を考慮するのに役立ちます。扱っている細胞が、通常、18時間で合流するにもかかわらず、あなたが扱っている細胞がそれ以上時間がかかるまたはそれより早く合流が達成された場合、細胞の新しい分画で特性化を行うか、培地の組成やインキュベーションの条件を変更する必要があるかもしれません。

エクソソームの回収時に対数期の増殖が問題となる理由

エクソソームは目的の成果物であるため、細胞増殖条件(およびエクソソーム放出条件)はエクソソームの品質および内包物の値に直接的に影響を及ぼす可能性があります。たとえば、ストレスの多い細胞増殖条件(過密の細胞が同時に培養され静止期に到達した培養など)では、厳しい環境を反映して、エクソソームの内包物に変化が現れます。2実験の目的が通常条件でエクソソームの内包物を再現することにあるならば、エクソソームを適切なタイミングで回収しなければなりません。

正確に超遠心法を行うために適切なローターを選択する

超遠心法機器を他者と共有するのは気が引けてしまうかもしれません。これは高価な機器で、間違ったチューブや RPM/RCF/g変換値を使用してしまい、機器に損傷を与えたり、入手しにくい検体を駄目にしてしまったりという失敗談は、誰もが聞いたことがあるでしょう。超遠心法では、検体の調製段階から、タスクに適切なローター選びまで、細部に渡る正確さが求められます。k係数(これは、遠心機器の角速度とローターの半径に基づき計算されます)の低いローターを選択すると、検体で最も効率的な分画遠心分離法が行えます。1たとえば、水平ローターはローターの最小半径と最大半径の間の差が固定角ローターに比べ大きく、固定角ローター内の同一検体は、水平ローターの場合と比較し、等密度点にしたがった密度勾配内の生体粒子をより素早く、より正確に分離します。特定の遠心法を使用する場合、k係数は特定のローターと関連している場合があり、ローター/遠心法の組み合わせごとにk係数を再計算する必要があります。また、速度も考慮しなければならない2つ目の変数で、使用するローターと設定内容によって変えていかなければなりません。分画超遠心分離法では、検体を適切な速度で、適切な時間回転させることがエクソソーム単離を成功させるのに極めて重要です。不適切なローターを使って検体が不適切に検体をペレッティングしてしまうリスクを最小限に抑えるには、Beckman Rotor Selection Toolで正しいローターを選択してください。

密度勾配の調製をする

密度勾配超遠心法

エクソソームとその他の同様の径の粒子(ウィルスとアポトーシス小体など)の密度が異なることを利用して確実に単離を行うため、純度の高いエクソソームを単離するのに密度勾配が不可欠です。密度勾配には、従来、高濃度ショ糖溶液が使用されていましたが、新しいプロトコルにより、正確に単離し、エクソソームの径を等浸透性保全するためにイオジキサノール勾配の使用が求められるようになりました。エクソソームの単離には別の手法もよく提案されていますが、密度勾配超遠心法よりも高い純度のエクソソームや内包物の多様性を実現する手法はまだありません。3密度勾配は超遠心法により抽出するエクソソームの純度に最も大きく影響するため、成分溶液を正確に調製することと勾配を正確に層化することが極めて重要です。この目的には液体自動処理が最適です。液体自動処理機はイオジキサノール/ショ糖溶液を正確に層化し、不連続な密度勾配を形成することができます。

エクソソームの径と濃度を決定する

単離したエクソソームは、その内包物(タンパク質、脂質、核酸など)ごとに直接解析したり、さらに特性化し、元の細胞に関する情報を得ることができます。自動化可能な、一般的に使用されている1つの特性化手法は、エクソソームの径解析です。この手法では、ナノ粒子トラッキングにより、分注内のエクソソームの径分布と濃度を特定します。ナノ粒子トラッキング解析(NTA)装置は、エクソソームの単離と特性化手順に簡単に組み込むことができ、エクソソームの径と濃度を正確かつ再現可能な方法で測定します。

ダウンストリーム解析を促進する

ほとんどのケースで、エクソソームの単離目的は、単にエクソソームを回収するだけではなく、この新たに認識された細胞間伝達情報を理解する1つの手段としてその内包物を解析することにあります。科学者は、エクソソームからDNA4、RNA5, 6、そしてタンパク質7, 8を単離することに成功しており、これらを用いて、これらの小さな伝達情報の主要成分や影響を解析しています。RNA-seq解析など、一部の解析では、慎重かつ再現可能にアセンブルされた反応を必要とします。これは、液体自動処理で行うことができ、ELISA解析などの別の解析では、細胞板の調製、インキュベーション、細胞板読み取り能力が必要で、これらの作業すべてをスマートで柔軟な自動処理によってプログラミングし、ワークフローを継ぎ目なく進めることができます。

分画超遠心分離法は、エクソソームを効果的かつ確実に単離する手法で、高純度のエクソソームを単離します。この複雑なワークフローでは、極めて高い精度と再現可能性が求められており、自動処理の選択は必然と言えます。エクソソーム単離および特性化の自動処理に関する詳細は、このアプリケーションノートをまずお読みください。

参考文献:
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