クロスマッチ解析例
FCMを用いた ドナー - レシピエント リンパ球 クロスマッチ(フローサイトメトリークロスマッチ) 解析例
ドナー(臓器提供者)の末梢血から比重遠心法によって分離した単核球(PBMC)浮遊液にレシピエント(患者)の血清を反応させた後、FITC標識 抗ヒトIgG (Fcγ) 抗体で蛍光染色してフローサイトメーターで測定します。
ドナー血清中に 抗HLA 抗体 などの 抗リンパ球抗体 が存在すると、陽性反応(蛍光強度の右側へのシフト)として検出されます。
このデータ例では、レシピエントの持つ抗体が T細胞特異的(抗T細胞抗体) なのか B細胞特異的(抗B細胞抗体) なのかを判定するため、 CD3 と CD19 に対する各蛍光標識抗体で T細胞(CD3陽性細胞)、B細胞(CD19陽性細胞)を検出、ゲートして解析しています。
Memo
臓器移植においてレシピエントが移植抗原(ドナーの臓器)に対する特異的抗体を持っていると、antibody mediated rejection を発症し、通常の免疫抑制療法では制御が困難です。
このリスク回避のため、術前にレシピエント血清中の抗ドナー抗体の有無を調べることが不可欠です。
この検査は一般には血清学的手法(LCT法)によって行われていますが、フローサイトメトリーを用いた方法(Flow Cytometry Cross Match, FCXM)を導入することにより、補体非依存性抗体の検出が可能になり、従来よりも高感度な抗体検出が可能です。
この試験は Flow-PRA とともに臓器移植を行う施設で普及しつつあります。
フローサイトメトリークロスマッチ 測定までの手順
- EDTA採血したドナーの末梢血から比重遠心法によって単核球を分離します。
- 単核球浮遊液の細胞数を 5×106/mL 程度に調整します。
- 細胞浮遊液 100µL に、規定量の 抗 CD3抗体(PC5標識)、抗CD19抗体(PE標識)、レシピエント血清を添加し攪拌します。
- 4℃ 暗所 で 30~45分 インキュベーションします。
- リン酸緩衝液(PBS)を加えて遠心し、上清を除去します。
- 2次抗体(FITC標識 抗ヒトIgG 抗体)を添加し攪拌します。
- 4℃ 暗所 で 30~45分 インキュベーションします。
- リン酸緩衝液を加えて遠心し、上清を除去します。(2回実施)
- リン酸緩衝液 500µL を加えて細胞を再浮遊させ、FCMで測定します。

臨床データ例 ① 患者:20代女性 ドナー:患者の母親
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リンパ球全体での反応結果 |
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抗CD3抗体陽性リンパ球(T細胞)にゲートした反応結果 |
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抗CD19抗体陽性リンパ球(B細胞)にゲートした反応結果 |
臨床データ例 ② 患者:10代女性(移植歴あり) ドナー:患者の母親(A24キャリア)
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リンパ球全体での反応結果 |
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抗CD3抗体陽性リンパ球(T細胞)にゲートした反応結果 |
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抗CD19抗体陽性リンパ球(B細胞)にゲートした反応結果 |
データ提供:社会保険中京病院 検査部様





