従来の複雑なマルチカラー クリニカル フローサイトメトリーの限界を超える
by Dr Carsten Lange
フローサイトメトリーは複雑なポピュレーションを詳細に解析できるパワフルな測定技術です。元々は研究室で用いられていたものが、この20年間で臨床検査室に欠くことのできない重要な手法になっています。
現在クリニカルフローサイトメトリーが使用されている重要な領域には、悪性血液疾患のフェノタイピングや、(他の検査法との併用による)疾患の診断、治療計画の説明、患者のモニタリングがあります。
高い検出力
フローサイトメーターの性能は、通常、希少/希薄なポピュレーションを検出する分解能と感度で測ります。そのため、性能の向上には、蛍光色素でタグ付けした細胞を最適に励起・発光するための効率的な光管理が重要になります。
APDテクノロジー
光は、波長分割多重(WDM)によって管理されます。WDMはバンドパスフィルタで光を分解し、効率的に検出器に送ります。
各パラメータを測定するための革新的な検出器として、非常に感度の高い半導体デバイスであるアバランシェフォトダイオード(APD)が使用されています。これとは対照的に、従来のクリニカルサイトメーターは、これまで(そして現在も)光電子倍増管(PMT)を使用しています。
APDがPMTより優れている主な点を以下に示しますが、これに限定されるものではありません。
- より優れた直線性
- 量子効率が4~5倍
- Hダイナミックレンジが広い(106 vs 103)
- サイズが小さい
Figure 1は、初めて市販された、小型APDを用いたコンパクトクリニカルサイトメーターのWDM(DxFLEX、ベックマン・コールター)です。APDを使用したことで、装置の設置面積が小さくなっています。各WDMには特定の波長を選択的に測定するための光学系および検出系のコンポーネントが含まれます。これによって光の回収量が増え、発光の弱いポピュレーションが検出できる高い感度が実現します。
Figure 1. WDMは光ファイバーとバンドパスフィルタを使って光の波長を分離します。
WDMは革新的かつシンプルにデザインされており、シングルバンドパスフィルタを使用して光の様々な色を選択します。これは、アレイに沿って光を反射する一連のダイクロイックステアリングフィルターとバンドパスフィルタを使用しているため、利用可能な光が次々と少なくなり、光収集効率が低下し、最終的には蛍光感度と分解能が低下してしまう従来の臨床用サイトメーターとは対照的です。
複雑なフローサイトメトリー検査を簡素化
APDを用いた検出器の直線性を活用することで、フローサイトメーターのオペレーションが非常にシンプルになります。その理由はシグナルが予測可能だからです。毎日の精度管理作業で行うリニアゲイン調整とノーマライゼーションで、装置でよく起こるセットアップ中の相対的変動に対応します。さらに、ソフトウエアの「gain-only adjustment」を使えば、複雑なアッセイのセットアップを簡素化にすることができます。
ゲイン調整による直線化で、手間がかかるためにカラーやパラメータを増やす際の高い障壁となっていたスペクトルのコンペンセーションも簡素化できます。APD直線性の利点を最大限に活用するため、コンペンセーションを簡素化することで非常に複雑な実験のセットアップと解析を簡単に行える、新たなソフトウエアアルゴリズムを開発しました。
今では、全てのパラメータとマルチカラーの組み合わせについて、APDゲイン設定とスペクトルのスピルオーバー関数を保存できるコンペンセーションライブラリを作成することが可能です。これによって、ユーザーはライブラリから様々なシングルカラーを選択し、仮想スペクトルコンペンセーションマトリクスを作成できます。さらに、リニアAPDの予測応答によりゲインが調整されると、ライブラリはコンペンセーション値を適切に自動調整します。その結果、複雑なマルチカラー フローサイトメトリーアプリケーションのセットアップ法が大幅に簡素化され、シンプルかつ直感的に行えるものになりました。
装置サイズ
コンプレッサカート不要ー必要な設置スペースを縮小。 寸法:28.3インチx 17.1インチx 13.4インチ(72 cm x 43.5 cm x 34 cm)
その未来は、もうここに
最高の性能と革新的なデザイン、そして技術を組み合わせれば、コンパクトでありながら使いやすいフローサイトメーターが実現可能です。従来のフローサイトメトリーの限界を超えていくことで、現在、そして未来のフローサイトメーターが臨床検査室で行われる複雑なマルチカラー検査を簡素化し、血液がんの最先端のアプリケーションをより深く理解することにつながります。フローサイトメトリーは、複雑な課題を研究するための強力なツールです。今日の臨床検査室では、より小さく、よりパワフルでありながら、もっと手頃な価格で使いやすいフローサイトメーターが必要とされています。当社のエンジニアは、イノベーションを活用することで、こうした声に応えることのできるソリューションを見つけ出すことが可能です。


