MET ONE 3400+を使用したクリーンルームの日常環境モニタリングとデータインテグリティ
製品紹介
GMPクリーンルームにおける日常環境モニタリングは、複雑になりがちな手作業のプロセスです。毎月何千というサンプルデータポイントを扱い、手作業でデータを転記しなければならない上に、データのギャップや完全性 の問題も頻繁に生じます。本稿では、ベックマン・コールター・ライフサイエンス の新たな気中パーティクルカウンター、MET ONE 3400+を使用して自動化することにより、これらの課題を解決する方法を紹介します。
クリーンルームの日常環境モニタリング・データインテグリティ完全性に関する課題
クリーンルームの環境モニタリング は、クリーンルームが正常に稼働していることを示すために、製造開始前および製造期間中に実施されます。サンプリング位置と頻度は、リスク評価に基づいて決定します。FDA CGMP1では 、「無菌処理施設のモニタリングプログラムを適切に実施し、クリーンエリアの当該清浄度クラスへの適合性を動的条件下で定期的に評価する。」と定められています。
しかし、様々なGMPのガイドラインやGMPクリーンルームにおける非生菌気中粒子数について定めた国際ISO規格は複雑で、相反するアドバイスを提供しているように見えることも多いため、混乱を招くばかりでなく、誤って解釈される場合もあります。日常環境モニタリングについては、指針となる記載がほとんどなく、適切なモニタリングプランを考案する責任はクリーンルームの所有者に課せられています。明確な規定の多いGMPの業界では、直接的なガイダンスがないと、ユーザが何をすべきか分からず苦しんだ末に、負担が大きすぎるモニタリングプログラムを作成してしまったり、あるいは清浄度クラス分類に使用したのと同じサンプリング場所を使用してしまおうという誘惑に駆られたりしますが、どちらも正しいとは言えません。前者、つまり負担の大きすぎるモニタリングプログラムが間違っているのは、厳密な管理を行っているクリーンルームへの必要以上の介入増加が、汚染イベントを生じるリスクにつながる可能性があるからです。また、後者のモニタリング設定法が正しくない理由は、日常環境モニタリングプログラムは製造工程における製品汚染の脅威に対するリスク評価に基づいて実施されるべきであり、清浄度クラス分類のルールではこの点が考慮されていないためです。例えば、ルーム内のどこで製品がリスクにさらされているか評価した結果、ルーム自体の清浄度クラス分類の評価に使用した場所と、モニタリング用のサンプリングを行うべき場所が大きく異なる場合があります。
しかし、日常環境モニタリングは、依然として毎日手作業で行われています。この作業では、毎月数千件もの記録を取得する場合もある上に、確認と承認は通常紙媒体への記録で行われ、さらに電子形式への転記は手作業で行われています。プロセス全体が、単純なヒューマンエラーによってデータエラーを生じる可能性にさらされているのです。
図1. 日常環境モニタリングプログラムは、ヒューマンエラーの影響を受けやすい
GMPクリーンルームのユーザにとってデータインテグリティの完全性はどのような意味を持つのか?
FDAのALCOAで示されている指針において明確な対象とされているのは、手動での設定とデータ転記作業です。
図2. FDA 21 CFR part 11のALCOAで示されている、完全で一貫性があり正確なデータに関する定義
2018年に発表されたFDA Guidance on 21CFR part 11の中のData Integrity Guidance for Industry2には、「近年FDAは、cGMPの査察において、データインテグリティに関わるcGMP違反を多く認めるようになってきている」という記載があります。さらに続けて、「データインテグリティに関連したこれらのcGMP 違反に対しては、警告書(warning letter )や輸入警告措置(import alert)、同意協定書(consent decree)といった規制当局による措置が数多く取られている」と書かれています。
またこの文書では、「企業は、作業プロセスの理解と技術に関するナレッジマネジメントに基づき、有意義かつ効果的な戦略をもってデータインテグリティについてのリスク管理を行うべきである」としています。そして、記録に関しては、「確認」、「検証」、または「レビュー」を行うべきであると定めています。また、このガイダンスでは、以下のような問いを立てて検証してみるのも有効ではないかと提案しています。
- データが完全であることを保証するための管理業務を実施しているか?
- 作業時にその実施状況が文書化されているか?
- 作業を行った個人を特定することができるか?
- 記録の変更を行うことができるのは権限を与えられた人物のみか?
- データの変更は記録されているか?
- 記録は、正確性、完全性、および確立された規格への適合性に関するレビューを受けているか?
MET ONE 3400+パーティクルカウンターは自動化において、どのような面で役に立つか?
21CFR part 11のALCOAデータ記録に対応した新機種、MET ONE 3400+ポータブル気中パーティクルカウンターのワークフローには、次のような特長があります。
データが完全であることを保証するための管理業務を実施しているか?
電子SOPおよびサンプリングマップがアップロードされ、MET ONE 3400+内で設定されています。また、SOPのバージョン管理もカウンター内で実施しています。サンプリングが終了した場所が緑色に変わるため、日常環境モニタリングプログラムが完了したことを一目で確認でき、サンプリングしそこなうこともありません。
作業時にその実施状況が文書化されているか?
毎日のサンプリング作業に関する電子記録は、MET ONE 3400+カウンター内でサンプリングと同時に作成され、外部ソフトウェアを用いずにイーサネット経由で外部出力され、作業時に正確な文書として確実に記録されます。
作業を行った個人を特定することができるか?
MET ONE 3400+は、ユーザ名とパスワードの管理にMicrosoft Active Directoryを利用しており、カウンターが作成する電子記録に電子署名を添付することで、作業およびその記録が特定の個人と確実に紐付けできるようになっています。
記録の変更を行うことができるのは権限を与えられた人物のみか?
MET ONE 3400+が利用しているマルチレベルのユーザ名およびパスワード管理方法では、アクセス権に関する設定を行うことができ、権限を有している人物しか記録の変更を行うことができず、また変更が行われた場合には装置内に監査証跡として確実に記録されます。
データの変更は記録されているか?
変更が行われると装置内に監査証跡として記録されます。監査の際にはフィルタリングやソーティングを行った上で迅速にレポートを提供することが可能です。
記録は、正確性、完全性、および規格への適合性に関する確認を受けているか?
権限を持った担当者が、Webブラウザを介して遠隔でカウンター内にあるサンプリングデータの確認・承認を行うことで、電子署名が付与された承認済みの電子記録が、イーサネット経由で カウンターから直接生成されるため、紙媒体での追跡作業や手作業でのデータ転記を行う必要がありません。
結論
MET ONE 3400+は、21CFR part 11で定められている、GMPクリーンルームにおける日常環境モニタリングのためのALCOAのデータインテグリティ完全性要件に対応するように設計されています。
参考文献
1. Food and Drug Administration. Guidance for industry. Sterile drug products produced by aseptic processing – current good manufacturing practice, 2004. U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research (CDER) Center for Biologics Evaluation and Research (CBER) Office of Regulatory affairs (ORA) Division of Drug Information, HFD-240 Center for Drug Evaluation and Research Food and Drug Administration 5600 Fishers Lane Rockville, MD 20857 USA
2. Food and Drug Administration. Data Integrity and Compliance With Drug CGMP Questions and Answers Guidance for Industry, 2018. U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research (CDER) Center for Biologics Evaluation and Research (CBER) Office of Regulatory affairs (ORA) Division of Drug Information, HFD-240 Center for Drug Evaluation and Research Food and Drug Administration 5600 Fishers Lane Rockville, MD 20857 USA