遺伝子治療ベクターの精製工程を最適化するための密度勾配超遠心法(英語)

演者:

Ross VerHeul
シニア アプリケーション スペシャリスト - ベックマン・コールター ライフサイエンス

概要:

遠心機は、幅広い分野での研究開発や生産の現場において、重要な分離機器として長い間役立てられてきました。現代の遠心機には、粒子のサイズまたは密度あるいはその両方によって、nmからμmの範囲の粒子を高い分離能で分離するために、1,000,000 x gを超える遠心力を発生させるように、信じられないほどの高速回転を生み出すことが可能な機種もあります。遺伝子治療は、難治性疾患で困っている患者様に対して新しい医療を提供できる研究分野であり、今急速に研究が拡大しています。今日の遺伝子治療用医薬品(ウイルスベクターなど)は、安全で効果の高い医薬品を一貫して製造しなければならないため、高い品質を担保できる高度な精製技術の確立が要求されます。

密度勾配超遠心分離法(DGUC)は、遺伝子治療用ベクターの製造工程の生産において、 ウイルスベクター{完全なAAVベクターと不完全な(遺伝子が入っていないもしくは遺伝子の一部が欠損した)AAVベクターとの分離}やプラスミドDNAを高純度に精製することが可能な、遠心分離技術をもとにした優れた手法です。DGUCは長年研究され確立された方法ですが、一部の方々には時代遅れで、実験の組み立てや手技が難しい、あるいは小規模な研究の現場でのアプリケーションにのみ適している、と思われていることがあります。このセミナーでは、このように考える方々のDGUCに対する苦手とされているポイントを明確にし、AAVベクターおよびプラスミドDNAの高純度精製技術としてDGUCを利用する有用性とその根拠についてご説明します。また、DGUCの実験の基礎から遺伝子治療用ベクターの製造工程での精製条件の最適化の方法についてもご紹介します。

セミナーの目的:

  • 様々なタイプの密度勾配作成テクニックと使用用途、超遠心分離実験の基礎を学ぶ
  • AAVベクターおよびプラスミドDNAの精製を例とした密度勾配超遠心実験の組み立て方と遠心条件の最適化の方法を学ぶ
  • DGUC条件の最適化をすることで、製造効率を最大7.5倍までスループットを増加させることができ、この最適化した遠心条件が製造規模のスケールアップにも適用できることを学ぶ