次世代シーケンスに核酸精製が重要な理由とは?
全ゲノムシーケンスは、生物の完全なDNA配列を決定するための強力な技術であり、最適なDNA/RNAサンプル調製が成功の鍵となります。サンプル調製の重要工程は、シーケンス結果の精度と信頼性を確保するために必須な精製です。ベックマン・コールター ライフサイエンスのゲノミクス担当コマーシャルプロダクトマネージャーであるSudha Savantは、シーケンスにおけるサンプル精製の重要性と、弊社製品がどのように皆様をサポートできるかについて解説します。
DNA/RNA精製の重要性:高品質の精製試薬による確かなDNAシーケンス
全ゲノムシーケンシングは、1970年代1に登場して以来、長い道のりを歩んできました。生物の全ゲノム解読は、大きな費用と長い時間を要するプロジェクトでしたが、現在では生物学と医学に関する重要な情報を提供する、迅速で正確かつ広く容易に利用可能な技術に変わりました2。次世代シーケンス(NGS)用のサンプルを調製するには、DNA/RNA抽出やライブラリ調製など、いくつかの重要な工程を実行する必要があります。さらに、シーケンシング結果に悪い影響を与える不純物を除去する必要があります。

図1 NGSワークフローの例
酵素、アダプター、プライマー、プライマーダイマー、取り込まれていないdNTP、その他汚染物質を確実に除去することをサンプル精製と呼びます。この工程は、シーケンスのワークフローでは見落とされがちですが、正確で信頼性が高く、再現性のある結果を得るためには非常に重要です。適切な精製を行われないと、シーケンス結果に対する信頼性が低下し、実験を繰り返す必要が生じ、コストと時間の両方の投資が増加する可能性があります。
DNA/RNA精製の課題
サンプル精製はシーケンスの中でも重要な工程ですが、課題もあります3。
収量の低さ
効率的なライブラリ調製を阻むのは、サンプルロスのリスクです。精製度の高いDNA/RNAは、NGSやPCRなどのゲノムアプリケーション成功のための前提条件です。そのため、貴重な遺伝情報、特にコピー数が少ない配列を失うことなく夾雑物を確実に除去する必要があります。ある程度のロスは避けられませんが、低収量な精製は貴重な遺伝情報を多く失い、得られる情報が少なくなる可能性があります。
コストと時間の浪費
NGSやPCRにおけるサンプル精製が不十分な場合、実験の失敗やデータ品質の低下につながる可能性があり、再度解析を繰り返す必要が生じます。これにより、時間とコストが増加します。シーケンシングエラーは、貴重な細胞検体などを扱う場合に特に深刻な問題になります。高品質な精製試薬を使用することで、ワークフロー全体の信頼性を高め、費用対効果を高めることができます。
実験ミス
実験ミスの可能性も、DNA/RNA精製において重要な問題となります。サンプル数の少ないラボの多くでは精製を手動で行っていますが、これらの精製を自動化することができます。自動化には、実験ミスを減らし、NGSデータの精度を高めることができるため、手動実験に比べて利点があります。手動と自動のどちらの精製方法を選択するかは、主に処理するサンプル数と予算によって判断されます。
DNA/RNA精製戦略
これらの課題をクリアするには、適切な精製方法選ぶことが肝要です。この選択は、サンプル量、必要とされる精製度、利用可能な機器、サンプルの種類などの条件によっても変わってきます。エタノール沈殿のような従来の方法は、手間と時間がかかるだけでなく、収量のばらつきやヒューマンエラーが発生しやすいのですが、スピンカラムまたは磁性ビーズ式の新しい手法は、効率と信頼性が高いため、サンプル数が多い現代のゲノム解析に最適です。
スピンカラム式精製
スピンカラム式のDNA/RNA精製では、多孔質マトリックスを含む特殊なカラムにサンプルを通します。このマトリックスはDNA/RNAが選択的に結合し、夾雑物が洗い流された後、精製DNA/RNAがカラムから溶出されます。カラム式精製では、下流解析に適した高品質のサンプルが得られ、様々なサンプル量に対応する各種キットが用意されています。ただし、このカラム式を用いた工程には時間と費用がかかる可能性があり、多段階の工程と遠心分離機などの高価な機器が必要です。
磁性ビーズ式精製
磁性ビーズ式精製では、サイズによってDNA/RNAを選択的に結合する磁性ビーズ使用されます。この工程で使用されるバッファーの作用により、DNA/RNAと磁性ビーズを結合させます。結合後、磁石を用いて磁性ビーズを溶媒から分離し、溶媒を廃棄し、磁性ビーズに結合したDNA/RNAを洗浄して、最後に磁性ビーズから精製DNA/RNAを溶出します。磁性ビーズ式精製は、工程が少ない上に遠心分離を必要とせず、自動化も容易なため、スピンカラム式の手法よりも短い時間で処理できる場合が多いです。そのため、特にハイスループットの処理に適しています。

図2 磁性ビーズ式のDNA/RNA精製ワークフロー
確かな精製試薬を使用することの重要性
最後に、高品質なDNA/RNA精製試薬キットに投資することは、 信頼性の高いシーケンス結果を得るために最も重要なことかもしれません。確かな試薬キットの使用は、コストがやや高くなる可能性がありますが、エタノール沈殿などの方法と比べて明らかに高い性能と効率を提供し、夾雑物の残存やサンプル分解のリスクを最小限に抑えて、信頼性の高いデータ取得に貢献します。この試薬への投資により、実験の失敗原因の追求や再実験の手間を減らし、時間とリソース浪費を防ぎます。
弊社では、様々な生体サンプルに対応するように設計されたDNA/RNA抽出・精製試薬キットのラインナップ用意しており、これらの自動化および半自動化のワークフローも提供しています。弊社の試薬キットは、精製DNA/RNAの分解を防ぎ、その収量を最大化しながら、夾雑物を効率的に除去できるように設計されています。ベックマン・コールターの高性能SPRI磁性ビーズ技術は、DNA/RNAサイズ選択的かつ最適化された結合条件を使用して、高いレベルでの分離精製を可能にします。これにより、再現性の高い結果が得られ、シーケンスの信頼性が向上します。
DNA/RNA精製プロトコルに関する詳細については、お気軽にお問い合わせください。
References
- https://www.nature.com/articles/d42859-020-00100-w
- https://www.yourgenome.org/theme/timeline-the-past-present-and-future-of-sequencing-technologies/
- https://www.cytivalifesciences.com/en/us/news-center/next-generation-sequencing-main-challenges-and-solutions-10001
本記事の著者について

Sudha Savant、ベックマン・コールター ライフサイエンス ゲノミクス担当コマーシャルプロダクトマネージャー
ベックマン・コールター ライフサイエンスのゲノミクス担当コマーシャルプロダクトマネージャーであるSudha Savantは、生化学と分子生物学のバックグラウンドを持っています。彼女は、腫瘍学、エピジェネティクス、および低分子探索の分野でのアプリケーションのためのゲノム抽出およびシーケンス解析とプロテオミクスの自動化の経験があります。現在、Sudhaは弊社で、SPRI技術を活用した磁性ビーズ式のDNA/RNA精製製品のマネジメントをしています。彼女は、社内外の研究者と協力して、精製製品の新しいアプリケーション開発を目指しています。
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