遠心機ロータは常に最高回転数で遠心可能でしょうか?(その1)
皆様 こんにちは。
遠心分離に使用する遠心機ロータは、それぞれ個別に最高回転数が決まっています。たとえば、超遠心機用固定角ロータ Type 100 Ti の最高回転数は 100,000 rpm です。
しかし、最高回転数は「サンプル密度」と「使用するチューブの種類」により変化します。つまり、固定角ロータ Type 100 Ti の場合、最高回転数である 100,000 rpm で遠心してはいけない場合があるのです!!これは皆様そして遠心機の安全のために大変重要なポイントです。
今回は、サンプル密度による最高回転数制限についてご説明いたします。(チューブの種類による最高回転数制限については別の記事にてご案内いたします。)
遠心機ロータはチタニウム合金もしくはアルミニウム合金により製造しますが、それぞれの材料は物理的強度に限界がありますので場合によっては最高回転数から減速しなくてはなりません。たとえば、超遠心機用固定角ロータは遠心サンプルの平均密度が 1.2 g/mL を超える場合は減速が必要となります。同様に、すべての遠心機ロータは遠心サンプルの平均密度により最高回転数が制限されます。
ここでショ糖による密度調整を行う遠心を検討しましょう。ショ糖は67%の重量濃度で密度が約 1.33 g/mL です。これは上記の 1.2 g/mL より大きいですね。つまり最高回転数での遠心はできません(注:高濃度のショ糖溶液をクッションとして使用する場合は減速の必要はありません。チューブ全体の平均密度が1.2 g/mLを超える場合に最高回転数制限が必要です)。そこで登場するのが次の式です。

上の例で計算すると...

最高回転数制限 例
つまり、最高回転数である 100,000rpm を 95,000 rpm まで減速して遠心する必要があります。もしこの減速を行わないと過剰なストレスがロータに加わり、破損の原因となります。
なお、ロータの種類によりサンプル密度限界が 1.7 g/mL の場合もあります。詳細はベックマン博士一口メモ Vol.30「サンプル密度とロータの最高回転数について」をご参照ください。
また、遠心中に溶質が再結晶する場合(セシウムクロライドなど)は別の減速方法が必要となります。「遠心機ロータは常に最高回転数で遠心可能でしょうか?(その2)」でご説明します。

固定角ロータ Type 100 Ti サンプル平均密度と最高回転数
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