遠心機ロータは常に最高回転数で遠心可能でしょうか?(その2)
皆様 こんにちは。
遠心分離に使用する遠心ロータは、それぞれ個別に最高回転数が決まっています。前回の「遠心機ロータは常に最高回転数で遠心可能でしょうか?(その1)」では、一般的な溶液で遠心する場合の最高回転数制限についてご説明しました。今回は特殊溶液、たとえばセシウムクロライド溶液を使用する場合の最高回転数制限についてお話しいたします。
セシウムクロライド溶液には、一般の溶液とは異なる大きな性質があります。それは「再結晶化」です。皆様はセシウムクロライドとサンプルをミックスして試料を準備されると思いますが、その時のセシウムクロライド濃度が重要なポイントとなります。
前回と同様に、超遠心機用固定角ロータ Type 100 Ti(最高回転数:100,000 rpm)で検証しましょう。
セシウムクロライドは、遠心力をかけ続けると再結晶する性質があります。遠心中に再結晶が発生しますと、結晶の部分は密度が大幅に増大するためそのポイントに遠心応力が集中し、最悪の場合ロータが破損するリスクが発生します。(写真1参照)

セシウムクロライドが遠心中に再結晶化したため、
バケットのセンターに遠心重量が集中した結果、底部が破損した例
それでは固定角ロータ Type 100 Ti の場合をご説明いたします。セシウムクロライド48%重量濃度でサンプルを調整するとその密度は 1.55 g/mL です。この場合、固定角ロータ Type 100 Ti の許容回転数は 51,000 rpm です。なんと最高回転数の半分まで減速する必要があります。(遠心温度4 ℃の場合)

固定角ロータ Type 100 Ti 平均密度による最高回転数の変化
回転数が約半分ですから、遠心力は当然 4分の1 になります(g=rω2 の関係が成り立ちます。 g:遠心力 r:回転半径 ω:回転角速度)。ここで、それぞれの回転数におけるκファクター(遠心分離能力の指標)を計算すると次のようになります。
固定角ロータ Type 100 Ti 回転数とκファクター
| 回転数(rpm) | κファクター |
|---|---|
| 100,000 | 15 |
| 51,000 | 58 |
つまり、同一条件のサンプルを遠心した場合、遠心分離時間は約4倍の差になってしまうのです。κファクターについてはベックマン博士一口メモ「遠心条件の換算はどうするの?-κファクタの意味とその利用法 その1 -」 および 「遠心沈降時間は、どのように算出しますか?-κファクタの意味とその利用法 その2 -」 を参照してください。
同じ遠心ロータを使用しても遠心時間が4倍もの差が出てしまうのはとても残念ですね。そこで、ベックマン博士として斬新なメソッドを開発しましたので、「遠心機ロータは常に最高回転数で遠心可能でしょうか?(その3)」でご紹介します。ご期待ください。
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