超遠心機の固定角ロータとスウィングロータはどのように使い分けますか?
固定角ロータとスウィングロータの使い分けについて考える時に、超遠心機と汎用多本架遠心機の場合では少し異なることになるので、今回は超遠心機の場合についてお話いたします。
超遠心分離法は大きく分けると、ペレッティング法と密度勾配遠心法に分けることができます。 固定角ロータでのペレッティングの時には、サンプル中の粒子は図1のように、一度チューブの側面に当たってから、側面を伝いながらチューブの底に移動していきます。
図1 固定角ロータでのペレッティング中の粒子の動き
それに対してスウィングロータの時には、図2のように粒子はチューブの側面に当たることなくダイレクトにチューブの底に移動していきます。
図2 スウィングロータでのペレッティング中の粒子の動き
このような遠心沈降の理屈を考えると、本来はスウィングロータの方が理に適っているのです。 ところが、超遠心分離のペレッティングはほとんどのケースで固定角ロータが使われます。それは固定角ロータには次のような利点があるからです。
■ ペレッティングで固定角ロータを使用する時の利点。
- より高い回転数で使用できるため高い遠心力を利用できる。
- スウィングロータと比べて、同容量であっても沈降経路長が短いため短時間で分離できる。
- サンプル本数が多くかけられる。
- 取扱いが容易である。
- より多種類のチューブが使用できる(スクリューキャップ式のPCボトルアセンブリなどが可能)。
それに対してスウィングロータはショ糖などによる沈降速度法の密度勾配遠心でよく使用されます。 それは次の利点があるためです。
■ 密度勾配遠心でスウィングロータを使用する時の利点。
- スィングロータの方が沈降経路長が長いので、密度勾配遠心の分離能がよい。
- 粒子が遠心力方向にダイレクトに沈降してゆくので、サンプルのバンドが乱れない。
- 肉薄のオープントップチューブ(PAチューブ、UCチューブ)がキャップなしで使用できるため密度勾配作成が容易になる。
また上記以外の目的では、次のようケースでスィングロータが使用されます。
- 分離法としてはペレッティングになりますが、チューブの底にショ糖の濃厚溶液をクッションとして敷いておき、 沈降したサンプル粒子が潰れたり、または活性を失ったりしないようにするため。例えばウィルスの分離に この方法がよく使用される。
- 遠心停止時に沈降したサンプル粒子が舞い上がるのを防ぐため。
スウィングロータは、減速中であっても常にチューブのトップから底の方向に重力が加わるため、サンプル粒子の舞上がりを最小限にすることができます。
いかがでしたか?「汎用品の15/50 mLコニカルチューブの場合、 固定角ロータとスウィングロータ どちらを使いますか?」で引き続きロータの使い分けについてのヒントをご紹介していきます。
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