解析方法【4】DNA量測定の意義
【4】DNA量測定の意義(DNA aneuploidyで腫瘍性の判断と割合を知る)
悪性リンパ腫を対象とした検査材料では、一般的に正常細胞が混在していることが多い。この混在している正常細胞は、DNA aneuploidyの検索において内部標準として非常に重要であり、そのG0/G1ピーク以外のG0/G1ピークがみられたときにDNA-aneuploidy陽性と判断するための基準となる。そのため腫瘍細胞が90%以上を占める検査材料では、正常G0/G1ピークが不明となるため、正常細胞を2-3割程度混ぜたサンプルも準備し、同様に測定する必要がある。
DNA ヒストグラムにおいて、PIの蛍光強度はDNA量に比例するため、正常G0/G1ピークの蛍光強度を“1.00”としてDNA-aneuploid cellsのG0/G1ピークの蛍光強度を相対的に表すDNA indexは、DNA量の定量的な比較を可能とする。
このDNA量の測定は、安価・簡便で最も早く知ることができる(染色操作は約20分)情報であり、NHLの3割以上の症例の腫瘍性増殖の有無と腫瘍細胞の割合を知ることができる非常に有用な測定項目である。
1)DNA-aneuploidyの検出とその割合
DNA aneuploid cellsは反応性病変では認めず、NHLの34%(B-NHL:35%、T-NHL:28%)の症例で認める。また、このDNA aneuploid cellsの存在とその量は,DNA indexと染色体分析による腫瘍細胞のモード数との相関関係や DNA aneuploid cellsの割合と造血器腫瘍マーカー検索により求めた腫瘍細胞の割合と一致する。このことから、 DNA aneuploid cellsは腫瘍細胞の存在を意味し、その割合は腫瘍細胞量を表す。
悪性リンパ腫におけるDNA aneuploidyの出現状況
病型 | DNA aneuploidy | ||
---|---|---|---|
(%) | (case numbers) | ||
B-ML | 35 | 95/273 | |
MM&plasma type | 78 | 20/28 | |
Follicular type | 33 | 20/61 | |
Mantle cell type | 14 | 1/7 | |
MALT type | 14 | 2/14 | |
CLL&small cell type | 0 | 0/10 | |
lymphoplasmacytoma | 33 | 1/3 | |
others | 6 | 1/16 | |
T/NK-ML | 28 | 14/50 | |
ALCL | 67 | 4/6 | |
ATL | 25 | 3/12 | |
T-LBL | 0 | 0/6 | |
AITL | 33 | 2/6 | |
peripheral T | 40 | 4/10 | |
NK type | 17 | 1/6 | |
others | 0 | 0/4 | |
HD | 0 | 0/33 | |
reactive | 0 | 0/178 |
その他、形態観察やマーカー検査で腫瘍細胞の細胞表面形質の同定が困難な症例においては、その同定に役立つ可能性があるので、DNA aneuploid cellsの有無だけでなく、その割合も観察しておく必要がある。
なお、NHLにおけるDNA aneuploid cellsはDNA indexが1.00付近や2.00付近に出現することが多く、分解能の高い方法や器械の選択が必要である。器械の精度管理として標準ビーズを用いた定期的なCV値のチェックは勿論であるが、末梢白血球を染色した際のCV値は、1.5%以下となるようにメンテナンスをしておく必要がある。
偽陽性として、血液腫瘍を対象とした場合には検出されることはないが、血液腫瘍以外を対象とした検索においては、反応性病変(顆粒球)や良性腫瘍で偽DNA-aneuploidy(1.10~1.30)を示す場合もあることもあるので、総合的な判断が必要である。
2)DNA indexの意義
DNA indexは染色体モード数と良好な相関を示し、染色体分析の補助的データとなりことから精度管理にも役立つ。また、FISH解析においても、シグナル数を予測することができ観察の手助けとなる。
3)予後因子としてのDNA index
DNA indexにおいてdiploidy とaneuploidyに分けると、予後因子として役立つ。diffuse large cell typeに絞って解析すれば、単独ではIPIなどに取って代わるほどのmajor prognostic factorではないが、他の因子と組合せた場合には、CRの有無や無病生存期間の予測において予測精度をさらに高める独立した予後因子であり、DNA indexは他の検査では評価できない腫瘍や宿主の一面を捉えている可能性がある。