DxFLEXコンパクトフローサイトメーターとDURACloneを用いたB細胞サブセットの解析

ヒトB細胞は、細菌や微生物毒素などの外来抗原に特異的に結合する抗体を生成します。
またT細胞とともに有害な病原体に反応し、生体内で免疫記憶を確立します。
これらの細胞は、クローン的に多様な細胞表面マーカーおよび分泌された免疫グロブリンB細胞受容体(BCR)分子の発現によって特徴付けられます。

DuraClone Dry試薬 IM B cells Tubeは8色の抗体がプレミックスされFCM用チューブ底に固相化された試薬です。サンプル調製のワークフローを簡素化し、Hands-on Timeを最小限にすることが可能です。
DxFLEXはコンパクトなデザインながら、107 スケールのダイナミックレンジを持ち、自動精度管理、自動蛍光補正機能をもつ優れたフローサイトメーターです。これらの試薬と機器を使い、マルチカラーでありながら簡単かつ、正確なデータ取得が可能となります。



はじめに

B細胞は骨髄で造血幹細胞から前駆細胞が作られ、脾臓などに移動し、T細胞の助けを受けて形成される胚中心でさらに分化・成熟します。分化の初期には、プレB細胞受容体(プレBCR)は、B細胞前駆細胞の継続的な成熟と生存を保証する上で極めて重要な役割を果たします。ヒト免疫系におけるB細胞の主な機能は、免疫原性構造を認識して記憶し、これらの認識または記憶された抗原に対する抗体を産生する形質細胞に最終的に分化することです。

B細胞はpro-B細胞の段階で免疫グロブリン重鎖遺伝子の再構成が開始され、pre-B細胞の段階で免疫グロブリン軽鎖遺伝子の再構成に成功した細胞が成熟B細胞へと分化します。胚中心(Germinal Center)で抗原刺激を受けたB細胞は、免疫グロブリン遺伝子V領域に体細胞突然変異を生じ抗原との親和性が向上した細胞へと分化します。現在、体細胞突然変異を有するものがmemory B 細胞、体細胞突然変異の見られないものがnaive B細胞と考えられています。胚中心では免疫グロブリン重鎖のクラススイッチも起り、クラススイッチしたB細胞はmemory B 細胞です。




通常、B細胞の90%はIgM+で、その大半はIgM+IgD+のnaive B 細胞であり、IgM+IgD- B 細胞には体細胞突然変異が認められるためmemory B 細胞と考えられています。IgM+IgD+B細胞でもCD27+を示すものはmemory B 細胞であることが分かっています。CD5+B細胞はIgM+IgD-です。

DuraClone Dry試薬 IM B cells Tubeは8色の抗体がプレミックスされFCM用チューブ底に固相化された試薬です。サンプル調製のワークフローを簡素化し、Hands-on Timeを最小限にすることが可能です。DxFLEXはコンパクトなデザインながら、107 スケールのダイナミックレンジを持ち、自動精度管理、自動蛍光補正機能をもつ優れたフローサイトメーターです。これらの試薬と機器を使い、マルチカラーでありながら簡単かつ、正確なデータ取得が可能となります。

DuraClone Dry 試薬 IM B cells Tube & DxFLEXコンパクトフローサイトメーター
FITC PE ECD PC7 APC APC-AF750 PB KO
IgD CD21 CD19 CD27 CD24 CD38 IgM CD45


サンプル調製手順

  1. 15 mLのコニカルチューブにPBSを10 mLと全血300 μLを添加します。
  2. 300 xg、10 分で遠心洗浄します。
  3. 上清を除き、ペレットをほぐします。
  4. 10 mLの PBSを添加し、300 xg、5分で遠心洗浄し、遠心洗浄後、上清を除きます。
  5. 300 μLのPBSで再浮遊します。
  6. 5の抗体チューブ(DuraClone IM B cellsTube)の全血100 μLを添加します。
  7. 6 ~ 8秒でよく攪拌します。
  8. 20 ~ 30℃、15分、暗所でインキュベートします。
  9. 2 mLの VersaLyse 溶血剤を添加し、 1 ~ 3秒でよく攪拌します。
  10. 20 ~ 30℃、5分、暗所でインキュベートします。
  11. 200 xg、 5 分で遠心洗浄後、上清を除き、ペレットをほぐします。
  12. 3 mLのPBSを添加し、200 xg、5分で遠心洗浄後、上清を除き、ペレットをほぐします。
  13. 0.1%ホルムアルデヒド加PBSを500 μLを添加し再浮遊します。
    - 0.1%ホルムアルデヒド加PBS作製法 -
    1 mL のPBS に1 2 .5 μ L のIOTest®3 Fixative Solutionを添加し攪拌


機器調整手順:Compensation セットアップ

  1. 蛍光補正用単染色サンプルを調製します。
      • Compensation KITにある8色のシングルカラーチューブに100μLの新鮮な全血を添加します。
      • 20 ~30℃、15分、暗所でインキュベートします。
      • 2 mLのVersaLyse溶血剤を添加し、 1 ~ 3秒でよく攪拌します。
      • 20 ~ 30℃、15分、暗所でインキュベートします。
      • 200 xg、 5分で遠心洗浄後、上清を除き、ペレットをほぐします。
      • 3 mLのPBSを添加し、200 xg、5分で遠心洗浄後、上清を除き、ペレットをほぐします。
      • 0.1%ホルムアルデヒド加PBSを500μ Lを添加し再浮遊します。
  2. DxFLEXを立ち上げ、精度管理を行います。
  3. Compensation Experimentを作成し、1で作製したシングルカラーチューブを使用して感度と蛍光補正を設定します。
  4. Panel Experimentを開きます。
      • 表示するプロット図を作成します。
      • 3で作成した感度と蛍光補正値をチューブに適応します。
      • サンプルを流しながらスレッショルドを設定します。
      • Stop Conditionを設定します。
  5. 「Record」をクリックしてデータを取得します。


データ解析方法

  1. CD45/SSのプロット図を作成し、白血球ゲート(Leukocytes)とリンパ球ゲート(Lymphocytes)を作成します。
  2. LymphocytesゲートをCD19/SSプロット図に展開します。CD19 陽性集団をゲートします。(CD19+ B cells)。
  3. CD19+ B cellsゲートをCD27/IgD、CD38/ CD21、IgM/IgDのプロット図に展開します。
  4. CD27/IgDのプロット図に4分割リージョンを作成します。
    IgD+CD27-:Naive B cells
    IgD+CD27+:Marginal Zone B cells
  5. CD38/CD21 のプロット図に四角形リージョン(CD21 Low CD38 Low)を作成します。
  6. IgM/IgDのプロット図に四分割リージョンを作成します。
  7. 7のIgM/IgDのプロットの四分割リージョンのIgM+IgD+とIgM+IgD-をCD38/CD27プロット図に展開します。
  8. 8で作成したCD38/CD27プロット図に四分割リージョンを作成する。
    CD38-CD27+: Class unswitched memory B cells
    CD38+CD27+: IgM+CD27+CD38high
    CD38-CD27-: IgM+CD27-CD38dim
    CD38+CD27-: IgM+CD27-CD38high
  9. 7のIgM/IgDプロット図の四分割リージョンIgM-IgD-をCD38/CD27に展開します。
  10. 10のCD38/CD27プロット図に四分割リージョンを作成します。
    CD38-CD27+: Class switched memory B cells
    CD38+CD27+: IgD-IgM-CD27+CD38high
    CD38-CD27-: IgD-IgM-CD38Low
    CD38+CD27-: IgD-IgM-CD27-CD38high
    IgD-IgM-CD27+CD38highにPlasmablast
    ゲートを作成します。
  11. 9のCD38-CD27-: IgM+CD27-CD38dimとCD38+CD27-: IgM+CD27-CD38high をCD24/CD38プロット図に展開します。
  12. CD24/CD38プロット図にTransitional B cellsゲートを作成します。




健常人末梢血解析例




参考文献

The EUROclass trial: defi ning subgroups in common variable immunodefi ciency. Wehr C, Kivioja T, Schmitt C, Ferry B, Witte T, Eren E, Vlkova M, Hernandez M, Detkova D, Bos PR, Poerksen G, von Bernuth H, Baumann U, Goldacker S, Gutenberger S, Schlesier M, Bergeron-van der Cruyssen F, Le Garff M, Debré P, Jacobs R, Jones J, Bateman E, Litzman J, van Hagen PM, Plebani A, Schmidt RE, Thon V, Quinti I, Espanol T, Webster AD, Chapel H, Vihinen M, Oksenhendler E, Peter HH, Warnatz K. Blood. 2008 Jan 1; 111(1):77-85.