MoFlo Astrios EQによるナノ粒子の測定

一般的なフローサイトメーターのFSCモジュールは1つのFSC検出器で構成されています。MoFlo Astrios EQのFSCモジュールでは2つのFSC検出器で構成され、その検出器はPMT(Photo Multiplier Tube:光電子倍増管)を使用しています。

MoFlo Astorios EQのFSCモジュール(eFSC)には、2つのFSCマスク、レーザー波長フィルター、NDフィルターを設置することができます。このマスクは前方散乱光の特定の角度の散乱光を通過させます。FSCマスクにはSマスク、Mマスク、Pマスクの3種類があり、レーザー波長フィルターとNDフィルターを組合わせてアプリケーションごとに使用することができます。
また、MoFlo Astrios EQのeFSCは0.2μmの粒子サイズをノイズと分離して検出することが可能です。
ここでは、eFSCの特徴を生かした「バクテリアとイーストの測定」と「ミトコンドリアの測定」のナノ粒子測定をご紹介します。



<バクテリアとイーストの測定>

はじめに

タンパク質(遺伝子発現、タンパク質発現)の研究など、さまざまな分子生物学的な研究において遺伝子操作を行う場合、微生物が利用されます。セルソーターでバクテリアとイーストを容易に分離できれば、セルソーターは分子学的分析や微生物分析のために微生物のクローン化する際のツールとして用いることができます。



材料と方法

Zymosan A BioParticles(S. cerevisiae:Yeast、FITC標識)とEscherichia coli BioParticles(E.coli:バクテリア、Texas Red標識)を1mLのPBSで再懸濁します。3種類のサンプル(イーストのみ、E. coliのみ、両方を混ぜたサンプル)を作成し測定します。



機器のセットアップ

サンプルを測定せずにFSCノイズによりThresholdを設定し、FITCを488nm・513/26バンドパスで、Texas Redを592nm・620/29バンドパスで検出しました。蛍光パラメーター(FITCとTexas Red)でイーストとE. coliを識別し、それぞれの集団にカラーゲート(青色と赤色)を設定しました。



結果

イーストとE. coli はEnhanced FSCモジュールでFSCノイズと明確に分離することができ、両者はそれぞれ異なる位置にプロットされました(図1)。Dual FSC解析を行うと1%未満のオーバーラップでイースト(青色)とE. coli(赤色)を分離することができます(図2のカラーゲートプロットC)。

図1 イーストと大腸菌

図2 イーストとE. coli のDual FSC解析


考察

Enhanced FSC Moduleの特徴の一つであるdualFSC解析を行うことで1~5umの大きさの粒子であるバクテリア(E. coli)とイースト(S.cerevisiae)をノイズ(シース液のノイズなど)と分離することが可能です。Dual FSCを用いて蛍光染色を行うことなく散乱光のみでイーストとE. coliのわずかな違いが検出でき、分析・ソーティングすることが可能です。



<ミトコンドリ測定>

はじめに

ミトコンドリアは真核生物細胞の細胞小器官の一つです。主な機能は電子伝達系によるATPの生産です。細胞のさまざまな活動に必要なエネルギーのほとんどは、ミトコンドリアからATPの形で供給されます。しかしそれ以外にも多様な機能を持っており、細胞周期やアポトーシスの調節などにも大きく関わっているとされています。
ミトコンドリア膜電位の一過性変化を定量化し、アポトーシスにとって重要な分子経路を分析する際、フローサイトメトリーは活用されます。



材料と方法

C6-マウスから切除した肝臓を1mL の0.9%(w/v)塩化ナトリウム溶液で一回洗浄します。肝臓ミトコンドリア単離は、Qiagen Qproteome Mitochondria Isolation Handbookとキット(Invitrogen社カタログ#37612)に従って処理します。単離した肝ミトコンドリアは、ミトコンドリア保存バッファで再懸濁します。ミトコンドリアを500nM MitoTracker Green(Invitrogen社カタログ#M7514)で37℃、20分間インキュベートし、染色します。サンプルは分析の直前までに4℃で保存します。



機器のセットアップ

FSC-1にMask:S1を設定し、FSC-2にMask:M2を設定します。MitoTracker Greenは488nm・526/52バンドパスで検出します。



結果

FSC-1(S1マスク)にThresholdを設定し、デブリスなどのノイズ除去を行いました。Dual FSCの一方のFSC-2(M2マスク)を使用することで、ミトコンドリアが検出できました。FSC-2(M2マスク) vs SSCで同定された集団は、MitoTracker Greenで染色されていることでミトコンドリアであるが確認できました。

図3 Enhanced FSCを利用したミトコンドリア解析



考察

Enhanced FSCを使用することによって、ミトコンドリアのような0.05~1umの微粒子の検出を蛍光染色することなく検出することが可能です。



<Enhanced Forward Scatterとは>

前方散乱光(Forward Scatter : FSC)は、レーザー光の軸に対して前方方向の小さい角度で散乱する光です。FSCは細胞表面で生じるレーザー光の散乱光、回折光や屈折光からなり、粒子(細胞、ビーズなど)の大きさに関する情報が得られます。
一般的なフローサイトメーターのFSCモジュールは一つのFSC検出器で構成されています。MoFlo Astrios EQは2つのFSC検出器で構成され、その検出器はPMT(Photo MultiplierTube:光電子増倍管)を使用しています。
集光された前方散乱光は、FSCモジュール内のBeam-Splitting Cubeで、直進と反射の2方向に分けられeFSC検出器に導かれます。2つのeFSC検出器それぞれに、FSCマスクと2つのフィルターを設定できます。FSCマスクは、前方散乱光の特定の角度の散乱光を通過させ、それ以外をブロックします。フィルタースロットには、レーザー波長に特有なフィルターとNDフィルターを設置することができます。
MoFlo Astrios EQのFSCは、アプリケーションごとにFSCマスク、レーザー波長フィルター、NDフィルターを組み合わせて使用することが可能です。

➊レーザ波長フィルター
➋ NDフィルター
➌ リムーバブルFSCキャップ
➍ Beam-splitting cube
➎ FSC 1 パラメーター用
 FSCマスク
➏ FSC 2 パラメーター用
 FSCマスク
➐ FSC 1 PMT
➑ FSC 2 PMT

図4 Enhanced Forward Scatterモジュール



FSCマスク

必要に応じてFSC PMT検出器の前にFSCマスクを配置することが可能です。FSCマスクは、さまざまなアプリケーションに対応するために柔軟にデザインされています。大きなFSCアングル検出や小さなFSCアングル検出のために3種類のFSCマスクがあります。

図5 3種類のFSCマスク



S-マスク

S1マスクとS2マスクは、Mマスクのブロキングエリアより小さいですが比較的大きなブロッキングエリアを有しており、小さなFSCアングルのFSCを測定します。これらのマスクは、類似した粒子サイズ(生細胞と死細胞の判別など)の小さな違いを判断することに役立ちます。

図6 マウスSplenocyte測定例
生細胞(水色) 死細胞(赤色)



M-マスク

Sマスクより大きなFSCアングルを検出します。 Sマスクと Pマスクより大きなブロッキングエリアは、マイクロパーティクルなどの微細粒子の分析をする際にFSCノイズを減少させます。また、ワイドレンジで、広範囲な粒子径のサンプルを 検出する場合に最適です。
マイクロパーティクル、赤血球、血小板、リンパ球、単球、顆粒球などの全血液成分のようなダイナミックレンジの広いサンプルを同時に分析する場合に有用です

図7 Mマスクを使用した全血液サンプル測定例
A:microparticles B:赤血球 C:血小板
D:リンパ球 E:単球 F:顆粒球



P-マスク

P1、P2とP3マスクは、多くのアプリケーションで有効で、一般的なマスクです。 SとMマスクは実際の細胞サイズに基づく散乱光パターンを示しますが、Pマスクは他のフローサイトメーターで見られるような一般的な前方散乱光パターンと類似したパターンを示します。

図8 ヒト血液サンプル測定例(溶血)



Dual FSC解析

Dual FSC解析は、2つのFSCパラメーターを同時に使用する解析方法です。
2つのFSCパラメーターを同時に使用し2パラメーター解析(ドットプロット)として表示することで、新たな知見を得られる可能性があります。
また、2つのFSCパラメーターを同時に使用し、それぞれを個々に1パラメーター解析(ヒストグラム)することで、広範囲ダイナミックレンジで散乱光が視覚化され、解析が容易になります。

図9 Dualマスク解析例
左図: FSC-1パラメーター(M1マスク)とFSC-2パラメーター(P3マスク)の同時使用
右図: M1マスクと1.0NDフィルターを使用して0.2umから30umまでの粒子を測定(上図)、
M2マスクを使用して0.2umと0.3umの粒子を測定(下図)