Eosin-5-maleimide(EMA)による遺伝性球状赤血球の測定法
赤血球EMA結合能試験
赤血球EMA結合能試験は、EMAが赤血球膜において主にバンド3と1:1に結合する色素であり、被検赤血球のEMA結合能をフローサイトメトリーによって定量的に評価する試験です1)。赤血球EMA結合能試験は遺伝性球状赤血球症(HS)の鑑別に有効な検査ですが、遺伝性球状赤血球症以外でもバンド3の遺伝子変異あるいは二次的異常をきたすような疾患、すなわち東南アジア楕円赤血球症や先天性赤血球異形成貧血(CDA)Ⅱ型でもEMA結合能が低下することが知られています2)。
赤血球EMA結合能試験測定手順
- EMA stock solution
EMA(Sigma社)をPBSで溶解(0.5 mg/mL)。小分け分注後、遮光して凍結結保し使用時に溶解(-80℃で6ヶ月間保存可能)。 - EDTA加血を遠心(マイクロ遠心機12,000 rpm 10sec)し、上清と白血球層を除去する。PBS 1 mLを加え、4回洗浄する(遠心条件は先と同じ)。得られた洗浄赤血球5 μLにEMA stock solutionを25 μL加えて混和、遮光して室温で1時間反応させる。反応終了後、12,000 rpmで10sec遠心し、上清をピペットで除去する。0.2%BSA - PBSで4回洗浄、PBS 1 mLに再浮遊させ、FCMで測定する。
遺伝性球状赤血球症のパターン例
図1
患児のEMA結合能(平均蛍光強度)はコントロールの66.1%であった。
結果の表示方法
- ①平均蛍光強度で表す(試薬の劣化に影響される可能性あり)。
- ②(患者の平均蛍光強度/対照の平均蛍光強度)×100(%)*
*大型赤血球と小型赤血球ではEMAの結合量が多少異なる。したがって当院では、対照としてMCVが近似した患者検体を用いている。
図2
- 測定の注意点
- ・凝集あるいは同時通過の赤血球がゲート内に入り込むと蛍光強度が偽高値となるため、赤血球凝集集団を囲まないようにゲーティングする。
- 1)加藤純子ら:日本検査血液学会雑誌 第11巻第1号22-27 2010
- 2)木崎昌弘(編著):血液病学第2版 中外医学社:358-362 2013