植物細胞を用いたDNA量測定例

フローサイトメーター(FCM)を用いることで、植物細胞のDNA量測定を簡単に行うことができます。Quanta SC MPLを使った測定例をご紹介いたします。

サンプル調製:倍数性推定

  1. 植物体*1の葉身(2 cm2程度)をペトリ皿上に切り取り、1 mL PVP溶液(核解離溶液:50 mM Tris-HCl, 0.5% polyvinylpyrrolidone-K90, 0.01% Triton-X, 0.63% sodium sulfate, pH7.5)を加え、数分放置する。
    1.ゲノムサイズを推定する際は、必ず内部標準となる植物体を併用する。
    1.Brachiaria属におけるゲノムサイズ推定ではイネ品種日本晴(Oryza sativa)を内部標準として用いている。
  2. カミソリ(FEATHER Ltdなど)で葉を細片する。(100~150回程度)
  3. サンプル液はナイロンメッシュ(30 μm)を通し、1.5 mLエッペンドルフチューブなどに移し濾過する。
  4. サンプル液を遠心する。(6,000 rpm、1~2分間)
  5. 上清を捨て、500 μL PVP溶液を加え、ボルテックスを行う。
  6. 50~100 μLのPI溶液(1 mg/mL)を、サンプル液に加え混和する。
  7. 5分間放置し染色する。
  8. フローサイトメーター(Quanta SC MPL)を用いて測定する。

補足①
植物種によっては、手順4および5を省略した方が良い場合がある。
まず初めに、手順4と5を省略した方法でサンプル液を調製および測定し、確認してみると良い。

補足②
ゲノムサイズ推定の際には、手順6の50~100 μL のPI溶液に0.25~0.5 μLのRNase(10 mg/mL)を添加し、30分間室温で放置し、RNAを消化する。

サンプルデータ例

  1. マメ科モデル植物ミヤコグサの実験系統における蛍光ピーク
  2. イネ科牧草ルジグラスの倍数性ピーク
    2倍体ルジグラスと4倍体ルジグラスの同時測定蛍光ピーク
    (4倍体ルジグラスは2倍体ルジグラスへのコルヒチン処理により作出しました。)
  3. イネ科牧草ブラキアリア属に属する草種の様々な倍数性ピーク

References

  1. Ishigaki, et al., (2009). Induction of tetraploid ruzigrass (Brachiaria ruziziensis) plants by colchicine treatment of in vitro multiple-shoot clumps and seedlings. Grassland Science. 55: 164-170.
  2. Ishigaki, et al., (2010). Estimation of genome size in Brachiaria species. Grassland Science. 56: 240-242.
  3. Kawasaki, et al., (2000). Genome Analysis of Lotus japonicus. Journal of Plant Research. 113: 497-506.

データ提供:宮崎大学 フロンティア科学実験総合センター
遺伝資源分野 明石研究グループ様