化合物管理
創薬プロセスには、大規模なライブラリが必須です。ライブラリに含まれる候補物質が、狙い通りに標的と相互作用するか、アッセイによって確かめます。
化合物管理には、候補物質の収集、プロセシング、構築、保管に加えて、選んだ物質が実験に使用できるようになっているか確認する作業も含まれます。創薬研究の成功には、化合物管理業務を効率よく行うことが欠かせません。一方、この業務に不備があると、影響が広範囲に波及し、重大な問題につながる場合があります。
化合物の完全性の維持
ヒットスクリーニングにおけるアッセイ結果の精度と一貫性を保つためには、収集した化合物の完全性を維持することが絶対的に重要です。
化合物管理業務を確立する際には、長期間の保存(複数年)および短期間の保存(数日から数週間)に適した条件を決定するとともに、化合物の特性によって保管条件を調整する必要があるか決めておく必要があります。
さらに、長期保存するサンプルは、研究者がアッセイのためにいつでも遅滞なく利用できるようになっている必要があります。そのため化合物管理業務では、化合物の完全性を損なうことなく、サンプルを長期保存から短期保存条件へと、速やかに移動させられなければなりません。
サンプルトラッキングおよびプロセシングの管理
必然的に化合物管理の大部分を占めるのは、記録保持とサンプル同一性のトラッキングです。化合物管理においては、各サンプルが中央データベースでのみ識別・管理されていれば良いわけではなく、それぞれがどのようなアッセイに使われたかトラッキングでき、その結果も記録されていなければなりません。この情報は、権限のない人によって変更されたり、予期しない形でデータを失ったりしないように、安全に保持される必要があります。
記録保持に問題があると、つぎ込んできた時間やリソースを危険にさらすという悲劇的結果を招くばかりか、臨床試験のフェーズにある薬については、人の健康を脅かす場合もあります。
化合物管理の自動化
数万という物質を1回の実験で処理できるハイスループットスクリーニング技術の到来とともに、化合物ライブラリのサイズやバラエティは指数関数的に増大しており、化合物を移動させる際に発生する業務が管理上の大きな負担となっています。
現在、創薬研究を行っている大規模な機関では、保管用スペースにおけるサンプル添加/除去作業を行えるロボット装置によって化合物管理を自動化しており、さらに電子バーコードを使うことで記録保持を容易にしています。
自動化の効用は、単に図書館司書のような役割を果たすことだけに留まりません。ハイスループットスクリーニングにおいては今や、薬剤を保管場所からアッセイへと移動させる作業ですら自動で行われることが多くなっています。これには、次のような操作も含まれます。
- 固体から溶液を作製する
- 濃縮された溶液を希釈する
- 繰り返しアッセイを行う場合や異なる手法のアッセイに使用する場合に、大きなボリュームの溶液を小さく分割する
これらの点において自動化は、煩雑になりがちな操作手順を高速で実行するだけでなく、サンプル処理の一貫性を将来にわたって向上させ、実験操作間における濃度の正確性や物理的性質の均一性を一定に保つことを可能にします。この特長は、ヒットスクリーニングにおいて偽陽性や偽陰性を排除するために必須である、アッセイデータの精度と再現性をさらに高めることにつながります。
サマリー
- ハイスループットスクリーニング技術の到来とともに、化合物管理がいつになく重要なものとなりました。
- 化合物管理は、保存期間に合わせた理想的な保管条件を決定・維持し、化合物の完全性を保つための業務です。
- 化合物のトラッキング、ラベリング、分類を行うことで、誤った前提に基づいた意思決定を防ぐことができます。
- 多くのライブラリは大量の化合物を擁しているため、化合物管理のワークフローを効率化するには自動化が欠かせません。
- また自動化によって、保管場所から化合物を移動させてアッセイの準備を整えることもできるため、正確性、精度、および業務効率が向上します。
創薬スクリーニング
アッセイ開発
|
1次スクリーニング
|
2次スクリーニング
|
ハイスループット
|
化合物管理をサポートする製品
Biomek i5
(Span-8)ライブラリのリフォーマットにおいて広範な液量やラボウエアに対応



