なぜ、肉薄チューブはフル容量でないと破損してしまうのか?
皆様 こんにちは。
Webやオンサイトの安全性セミナーにて「なぜ肉薄チューブ(指で軽く押すだけで変形するチューブ)は、フル容量でないと破損・潰れてしまうのか?」というというご質問をいただくことがあります。「遠心チューブの破損原因と正しいサンプル量について」においても肉薄チューブのサンプル量について触れましたが、今回はなぜ破損・潰れてしまうのかについてご説明いたします。
超遠心機用の肉薄チューブ(Opti-Sealチューブ・Quick-Sealチューブ・肉薄オープントップチューブ)には、ほぼ明確なサンプル量の規定があります。それはチューブのフル容量(上から2~3 mm)を入れなくてはならないというものです。
下は、半量だけ水を入れてスウィングロータにより短時間遠心した肉薄チューブの写真です(危険ですので絶対に真似しないでください)。中央が蛇腹状になっていることがわかりますね。このまま遠心を続けると、チューブ璧が徐々に内側に潰れ最後にはバケットの底にプラスチックの塊ができ、インバランスを起こして事故になる可能性が高まります。非常に危険な状態です。チューブがつぶれても重さは変わらないのだからインバランスは起きないのでは、と考えた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、重心が変わることでもインバランスは起きるのです。

では、なぜこのようにチューブ璧が潰れるのでしょうか?
写真を見ると、チューブ壁の自重が最もかかっていて中からの支え(圧力)がない部分、サンプルのすぐ上のあたりが内側に凹んでいることが分かります。この内側への凹みが断続的に起きるため、見た目が蛇腹状になります(なお、外側にはバケットの壁がチューブに密着しているため、外側に変形することはありません)。
サンプルをフル容量にしておけば、遠心力により上から強く抑えられたサンプルが、中からチューブ璧を支えます(下図)。

このように、フル容量のサンプルによって中から支えられないと、肉薄チューブはその自重により変形し破損・潰れてしまうのです。
「肉薄チューブが潰れ、底に固まって取れない。さて、どうする?」では万が一、チューブが潰れてバケットの底に固まってしまった場合の取り出し方を解説します。
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