GFPとノーベル賞 フローサイトメトリー用語辞典
緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein, GFP)は、オワンクラゲ(お椀水母、Aequorea coerulescens) がもつ分子量約27 kDaの蛍光タンパク。1962年に下村脩によってイクオリンの分離精製の際に同時に発見された。下村はこの発見で、2008年のノーベル化学賞を受賞した。
オワンクラゲ
オワンクラゲの生体内では、GFPはイクオリンと複合体を形成している。細胞内カルシウムを感知して発光するイクオリンは、単体では最大波長460 nmの青色であるが、オワンクラゲの発色細胞内では、GFPがイクオリンからエネルギーを受け、最大蛍光波長508 nmの緑色の蛍光を発する。GFPは励起光を当てると単体でも蛍光を出す。
下村による発見から30年を経た1992年、プレーシャーらのグループがGFP遺伝子の同定・クローニングに成功し、1994年コロンビア大学のマーティン・チャルフィーらのグループがGFPの遺伝子で、線虫の神経細胞を光らせることに成功した。さらにカリフォルニア大学サンディエゴ校のロジャー・チェンらは、GFPを遺伝子操作して様々な蛍光を作り出し、蛍光強度を高めた。(チャルフィーとチェンは、下村とノーベル化学賞を共同受賞している)。
GFPの発色は単体で機能することや、細胞への発現方法が確立したことなどから広く普及した。フローサイトメトリーでも、蛍光タンパクは、蛍光色素、抗体(蛍光標識)と共に、細胞の重要な目印になっている。
下村脩(しもむら おさむ)
1928年、京都府福知山市生まれ。米マサチューセッツ州在住。長崎医科大学付属薬学専門部(現長崎大学薬学部)卒。60年、名古屋大学理学部天然物有機化学の平田義正教授の元で海ホタルの発光物質ルシフェリンの研究で博士号を取得。60年夏、米プリンストン大へ研究員として留学し、GFPを発見。63年、名古屋大学助教授に、その後、82年から01年まで、米ウッズホール海洋生物学研究所上席研究員。