USP<643>

industry satandard usp 643USP<643>には、製薬用途に用いられる水に含まれる全有機体炭素(TOC)を測定するための一般的な方法が示されています。これには、

  • 使用する分析法の適格性を確認する方法に関する説明
  • 限度試験として用いる装置の結果を解釈する方法に関する指示
  • 以下に対するTOC試験法の詳細
    • バルク水[例:精製水(PF)、注射用水(WFI)、血液透析用水およびピュアスチームの凝縮水]
    • 滅菌水[例:滅菌注射用水(SWFI)、滅菌精製水(SPW)、滅菌吸入用水、滅菌洗浄用水]

が含まれています。

USP<643>の全有機体炭素(TOC)の要件

全有機体炭素は、製薬用水に含まれる有機分子を、炭素として間接的に測定したものです。

有機分子は、原水、精製および配水システムの材料、システム内に形成されるバイオフィルム、滅菌水および非滅菌水の包装から水へと導入されます。また、TOCは、精製および配水システムを構成する各ユニット中のTOCをモニタリングするための工程内管理項目として使用することも可能です。

TOCの測定は、エンドトキシンや微生物の管理に代わる試験ではありません。食物源(TOC)と微生物活性とのあいだに定性的関係が存在する可能性はありますが、数値上の直接的な相関はありません。

TOCの分析には、様々な方法が認められています。この章は、特定の手法の使用を支持、制限または防止する意図ではなく、こうした分析法の使用適格性をどのように確認できるか、また、限度試験として使用するためには、装置の結果をどのように解釈すればよいかが説明されています。

製薬用水中のTOCの測定に広く使用される装置に共通する目的は、水中の有機分子を酸化して二酸化炭素を生成させ、生成した二酸化炭素の量を測定することです。その後、生成した二酸化炭素の量を決定し、これを用いて水中の有機炭素濃度を計算します。

すべての分析法は、溶存二酸化炭素や炭酸水素塩などに由来して水に含まれる無機炭素と、サンプル中の有機分子の酸化によって生成される二酸化炭素とを識別できなければなりません。この識別は、無機炭素を測定してそれを全炭素(全炭素は有機炭素と無機炭素の合計です)から差し引くか、酸化前にサンプルから無機炭素を除去するかのいずれかの方法で行うことができます。

この除去によって有機分子も除去される可能性がありますが、製薬用水に含まれるこうした除去可能な有機炭素の量はごくわずかです。

手順

バルク水

以下の項は、バルク精製水、注射用水、血液透析用水、ピュアスチームの凝縮水の試験に適用されます。

装置の要件:この試験法は、校正された装置を用いて、オンラインの試験として、またはオフラインのラボ試験として行います。以下に示すように、装置の適合性を定期的に確認しなければなりません。また、メーカー規定の検出限界が0.05 mg炭素/L(0.05 ppm)以下の装置でなければなりません。

品質管理の目的で水を試験する場合は、装置とそのデータが適切に管理されていることと、オンラインとオフラインの両方の測定で、サンプリング方法やサンプリングポイントが使用する水の品質を表せるものであることを確認します。オンライン測定かオフライン測定かを選択する際には、水の製造上、配水上および使用上の特質を考慮しなければなりません。

試薬水:TOC濃度が0.10 mg/L以下の水を使用します。
[注:方法の信頼性を確保するために、導電率の要件が必要となることがあります。]

容器の準備:容器に有機物が混入すると、TOC値が高くなります。そのため、有機残留物が十分に洗浄された実験器具や容器を使用します。有機物を有効に除去できるあらゆる方法が使用可能です(ガラス器具の洗浄<1051>を参照してください)。最終リンスには試薬水を使用します。

標準溶液:各条に特に規定されていないかぎり、米国薬局方のショ糖標準試薬を正確に量り、それを試薬水に溶解して、ショ糖の濃度が1.19 mg/L(0.50 mg炭素/L)の溶液を調製します。

システム適合性溶液:米国薬局方の1,4-ベンゾキノン標準試薬を正確に量り、それを試薬水に溶解して、濃度0.75 mg/L(0.50 mg炭素/L)の溶液を調製します。

対照試薬水:標準溶液およびシステム適合性溶液の調製に用いた時点と同じ時点で得られた試薬水を適量使用します。

水サンプル:使用する水の品質を適切に反映するオンラインまたはオフラインのサンプルを採取します。

その他の対照溶液:メーカーの指示に従って、装置のベースラインの設定または校正の調整に必要となる適切な試薬ブランク溶液などの規定の溶液を調製し、必要に応じて適切なブランクを測定して装置をゼロ点補正します。

システム適合性:

  1. 対照試薬水を装置で試験し、測定値rWを記録します。
  2. 標準溶液を用いて試験を繰り返し、測定値rSを記録します。
  3. 標準溶液の測定値rsから対照試薬水の測定値rwを除して、補正後の標準溶液の測定値を計算します。0.50 mg炭素/Lの理論限界は、補正後の標準溶液の測定値rS-rWと等しくなります。
  4. システム適合性溶液を装置で試験し、測定値rSSを記録します。
  5. システム適合性溶液の測定値から対照試薬水の測定値を除して、補正後のシステム適合性溶液の測定値rSS-rWを計算します。
  6. システム適合性溶液の回収率を計算します。

回収率(%)=100[(rSS-rW)/(rS-rW)]

rSS=システム適合性溶液の測定値
rW=対照試薬水に対する装置の測定値
rS=標準溶液に対する装置の測定値

回収率が85%以上115%以下であれば、試験は合格です。

手順―水サンプルで試験を行い、測定値rUを記録します。rUがrS-rW以下であれば、水サンプルは合格です。この方法は、装置の要件を満たすオンラインまたはオフラインの装置を用いて実施することができます。

 

滅菌水

以下の項は、滅菌注射用水、滅菌精製水、滅菌洗浄用水、滅菌吸入用水の試験に適用されます。  

以下の点以外は、バルク水の要件に従います。 

装置の要件:バルク水の装置の要件に加えて、メーカー規定の検出限界が0.10 mg炭素/L(0.10 ppm)以下であることが必要です。

試薬水:TOC濃度が0.50 mg/L以下の水を使用します。[注:方法の信頼性を確保するために、導電率の要件が必要となることがあります。]

標準溶液:各条で特に規定されていないかぎり、米国薬局方のショ糖標準試薬を正確に量り、それを試薬水に溶解して、ショ糖の濃度が19.0 mg/L(8.0 mg炭素/L)の溶液を調製します。

システム適合性溶液:米国薬局方の1,4-ベンゾキノン標準試薬を正確に量り、それを試薬水に溶解して、濃度12.0 mg/L(8.0 mg炭素/L)の溶液を調製します。

水サンプル:使用する水の品質を適切に反映するサンプルを採取します。開封前にパッケージを激しく攪拌し、水サンプルを均一にします。分析に十分な量の水を得るために、複数のパッケージが必要となる場合もあります。

システム適合性:

  1. 対照試薬水を装置で試験し、測定値rWを記録します。 
  2. 標準溶液を用いて試験を繰り返し、測定値rSを記録します。
  3. 標準溶液の測定値から対照試薬水の測定値を除して、補正後の標準溶液の測定値を計算します。8.0 mg炭素/Lの理論限界は、補正後の標準溶液の測定値rS-rWと等しくなります。
  4. システム適合性溶液を装置で試験し、測定値rSSを記録します。
  5. システム適合性溶液の測定値から対照試薬水の測定値を除して、補正後のシステム適合性溶液の測定値rSS-rWを計算します。
  6. システム適合性溶液の回収率を計算します。 

回収率(%)=100[(rSS-rW)/(rS-rW)]

rSS=システム適合性溶液の測定値
   rW=対照試薬水の測定値
rS=標準溶液の測定値

応答効率が85%以上115%以下であれば、試験は合格です。

手順:水サンプルで試験を行い、測定値rUを記録します。rUが滅菌水のシステム適合性要件で決定したrS-rW以下であれば、水サンプルは合格です。


その他の要件

米国薬局方標準品<11>
米国薬局方1,4-ベンゾキノン標準品
米国薬局方精製白糖標準品