Kaluza入門:データのスケーリングとコンペンセーションの調整
Add All Plots(全てのプロットを追加する)機能、Spillover(漏れ込み)スライダー、Logicle スライダーを用いて、Kaluza*でフローサイトメトリーデータのデータスケーリングと蛍光補正を行います。
データスケーリングの重要性
対数目盛(Log)でデータを表示する場合、正しく補正されたフローサイトメトリーデータは、負の値を持つイベントが軸に沿って積み重なる傾向があるため、誤って補正されすぎているように見えることがあります。この歪みは、Logスケールに負の値が存在しないために発生します。この問題を修正するため、Kaluza AnalysisにはLogicleスケール(図1)という機能があり、これにより補正されたデータを正しく表示することができます。軸をLogからLogicleスケールに変更すると、軸は2つの領域に分割され、正の値はLogスケールのまま残り、負の値はLinear(線形)スケールに変換されます。2つの異なるスケールはスライダーによって分割され、各領域の幅を相互に操作できます。Logicleスケールを使用すると、正しく補正されたデータが望ましい対称的な外観に保たれ、負の値が正しく表示されます。
このアプリケーションノートのデータは、正常な全血サンプルをDURAClone IM Phenotyping Basic Antibody Panel*(製品番号 B53309)で染色し、フローサイトメーターCytoFLEX LXで取得し、Kaluza Analysis Software*を用いて解析し、作成されました。Kaluza Analysis Softwareの詳しい使用方法については、Kaluza Analysis Software取扱説明書(製品番号 C10986)をご参照ください。このアプリケーションノートは取扱説明書に代わるものではありません。

図1. LogとLogicleのデータスケーリングの比較。同じデータセットの対数スケーリングとLogicleスケーリングの例。Aの矢印は、軸上のデータ点を示しています。プロットは例示のためのイメージです。
指定された検出チャンネル以外のチャンネルへの蛍光色素の蛍光漏れ込みは、蛍光補正によって修正されます。補正アーティファクトが修正されていないと、下流の解析に悪影響を及ぼす可能性があります(図2)。補正マトリクスが既に適用されている状態でサンプルを取得した場合でも、すべてのサンプルについて補正を確認し、修正を行うことが望ましいです。

図2. コンペンセーションの課題点を見つける。表示されているのは同じデータセットで、A) APC-AA700チャネルへのCD4-APCの蛍光の漏れ込みが過剰に補正されています B) 適切に補正されています C) 過小に補正されています。AとCの矢印は補正アーティファクトを示しています。プロットは例示のためのイメージです。
Add All Plots機能を使用すると、すべての蛍光パラメータを相互に比較するためのプロットを素早く生成することができます。これにより、スケーリングとコンペンセーションの調整を行うためのデータのあらましが得られます。以下では、マルチカラーデータセットのデータスケーリングとコンペンセーションを調整するために実行可能なワークフローを説明します。
Add All Plots(すべてのプロットを追加)
Add All Plots Optionsメニューでは、Add All Plotsを選択したときに加えられるプロットとゲートのタイプを設定することができます。選択した内容はKaluzaに記憶され、次にAdd All Plotsアイコンをクリックしたときに自動的に適用されます。
- Plots & Tablesリボンタブから、Add All Plotsアイコンのドロップダウン矢印をクリックして、プロットシートに追加されるプロットをカスタマイズします。このアプリケーションノートで概説されているワークフローに従うには、図3に示すように選択を行います。

図3. Add All Plots機能。 ここで示されている例に用いられているAdd All Plots Optionsの選択。「Prot Type : Dot」「Gate Type : Ellipse」のゲーティングプロットを追加し(Include gating plot)、X軸とY軸の検出器(X axis and Y axis detectors)として、それぞれFS LinearとSS Linearを選択しました。
- Add All Plotsをクリックして、プロットを作成します。集団「A」を同定する楕円ゲートを含む前方散乱と側方散乱を比較するドットプロットが作成されます。さらに、集団「A」上でゲーティングされたすべての蛍光パラメータを相互に比較する密度プロットが表示されます。
データスケーリングの調整
使用するサイトメーターや機器の設定、Kaluzaにおける$CYTデフォルトのスケーリング設定によっては、ゲートAの位置やデータスケーリングの調整が必要になる場合があります(図4)。

図4. 調整前と調整後のデータ。パネルAとBは、デフォルト設定のフローサイトメーターCytoFLEX LXのデータを示しています。パネルCとDは、データスケール、logicle変換、ゲートAの位置を調整した後の同じデータセットを示しています。
- Forward Scatter(前方散乱)とSide Scatter(側方散乱)のGating Plotで、ラジアルメニューにアクセスしてDataメニューを開きます。
- • 例えば、最大チャンネルのハイパーリンクをクリックして、Display Min / Max(表示する最大/最小チャンネル)を変更するか、Autoを選択して、既に収集されたデータに基づいて軸の表示上限と下限をソフトウェアが自動的に設定するようにします。また、Zoomツールを使用して、プロットの一部に焦点を合わせることもできます。

図5. DataメニューとDisplay Max(表示最大値)。 A) Display Maxを調整したDataメニュー B) Zoom in(拡大)後のデータ。プロットは例示のためのイメージです。
- ゲートAを移動して、関心のある集団を含むようにします。必要に応じて、Displayメニューを用いて解像度を調整します。

図6. Gating Plot。ゲートAの位置を調整したGating Plot。プロットは例示のためのイメージです。
- Logicle変換を調整し、必要に応じてすべての蛍光チャンネルのDisplay Maximumを調整します。
logicle変換を調整するには、調整したいプロットを選択し、左下隅に表示される logicleスライダーを選択してドラッグし、負の値を表示するようにスケールを調整します(図7AおよびB)。
Display Maximumを調整するには、プロット上で右クリックしてラジアルメニューにアクセスし、Dataメニューを開きます。Display Maxの横にあるハイパーリンクを選択して最大チャンネル値を選択するか、もしくは手動で表示最大値を設定します(図7CおよびD)。すべての蛍光チャネルについて繰り返します。

図7. データのスケーリング。logicleスケールの調整前(A)と調整後(B)、Display Maxの調整前(C)のデータ。パネルDは、Display Maxのハイパーリンクを示しています。E) 適切なlogicle変換設定とDisplay Maxを適用した後のデータ。プロットは例示のためのイメージです。
- Zoom In(拡大)ツールは、プロットの特定の領域を拡大するために使用できます。

図8. データ表示ツール。Zoom Inツールは、特定のプロット領域を拡大するために使用され、Dataメニューは、新しいDisplay MinとDisplay Maxの設定を可視化するために表示されています。プロットは例示のためのイメージです。
成功のためのヒント
$CYT Defaults
特定のサイトメーターモデルのすべてのデータファイルに用いられるデフォルトのスケーリングを定義できます。これにより、手動でのスケール調整の時間を節約することができます。デフォルトのスケールを設定するには、線形散乱の最小値と最大値、対数的または論理的に表示される蛍光パラメータ、蛍光パラメータについて希望する表示ディケードの数、およびlogicle変換のWidth(幅)を決定します。Widthの設定は、負のデータ範囲の幅と“ディケード”で線形化されたデータ範囲の幅を決定します。これはパネルによって最適化する必要がありますが、機器や機器の設定に合わせて適切なデフォルト値を選択することで、必要な調整の量を減らすことができます。
- KaluzaアイコンとKaluzaオプションを選択します。
- Kaluzaオプションメニューから$CYT Defaultsタブに移動します。
- 左側のパネルで、スケーリングのデフォルトを設定する機器を選択します。
- メインコンフィギュレーションエリアのParameter Scaleセクションまでスクロールします。
- Linear、Log、Logicleのパラメータスケールをデフォルトで設定するか、Min(最小値)、Max(最大値)、Decades(ディケード)、および Width(幅)を指定された範囲内で任意の値に設定します。
- ApplyとOKを選択して、解析に戻ります。
Scale Mode(スケールモード)
Kaluzaには2つの異なるScale Modeがあります。Scale Modeでは、デフォルトのプロットの軸スケールを設定します。Full Rangeスケールは、サイトメーターで検出された最大チャネル数に応じて、最大7ディケードまでです。Legacyスケールでは、データを4ディケードまたは最大チャネル数1024に再スケールして表示します。2つのScale Mode設定の比較を図9に示します。

図9. Full RangeスケールとLegacyスケールの比較。 同じデータをFull Rangeスケールモード(A)とLegacyスケールモード(B)で示しています。集団の見かけは変化していないことに注意してください。軸スケールが異なり、例に示されている蛍光強度の中央値のような、いくつかの蛍光強度測定値が軸スケールに応じて変化します。プロットは例示のためのイメージです。
ほとんどのサイトメーターのデフォルト設定は、Naviosフローサイトメーター(Legacy)とMoFlo Astriosセルソーター(Astriosスケールモード)を除いて、Full Rangeです。特定のサイトメーターモデルのデフォルトのスケールモードは、Kaluzaオプションメニューで選択できます。
- Kaluzaオプションメニューの$CYT Defaultsタブを開きます。
- 左側のパネルで、スケーリングのデフォルトを設定したい機器を選択します。
- メインコンフィギュレーションエリアのScale Modeセクションまでスクロールダウンします。
- 希望するScale Modeを選択します。
- ApplyとOKを選択して、解析に戻ります。
$CYTデフォルトの変更は、変更後にKaluzaに読み込まれたデータセットに対して有効になります。すでにAnalysis Listにあるデータセットには影響しません。
Scale Modeは、Analysis Listにある解析について選択することもできます。蛍光の測定値の平均が取得ソフトウェアで観測されたものと一定のファクターで異なるなど、予期しない結果が観測された場合は、スケールモードを確認し、必要であれば変更してください。AnalysisまたはComposite内のすべてのシートとデータセットについて、Analysis(解析)ごとにScale Modeを変更するには、以下の手順に従います。Analysis ListのAnalysisを右クリックし、Protocol Scale Modeにマウスオーバーして、希望のScale Modeを選択します。
注: マルチファイル解析用にCompositeを作成すると、すべてのデータセットについてスケールモードが自動的にフルレンジに切り替わります。
コンペンセーションの調整
Spilloverスライダーを使用すると、プロット上においてリアルタイムの視覚的な手がかりによって蛍光の漏れ込みを補正することができます。スライダーは、適用可能なすべてのプロットに生成できます。この他のKaluzaで補正マトリックスを変更するオプションについては、Kaluza Analysis Flow Cytometry Software IFU C10986を参照してください。
Spilloverスライダーを使用するには
- Gates & ToolsリボンタブからCompensationアイコンを選択します。適用されるプロットには、プロットスライダーが装備されます(図10A)。
- Spilloverスライダーを使用してSpilloverを更新するには、スライダーのいずれかを変更したい方向にクリックします。Spilloverの値は、図10Bに示すように、スライダーの横に表示されます。
Spilloverを段階的に調整するには
- 0.1 %単位で移動するには、スライダーの両端にある適当な矢印を選択します。
- 矢印が選択されるたびに、スライダーのハンドルが0.1 %移動します。この変更は、Compensationペインにおいて数値で確認することもできます。
- 1 %単位で移動するには、スライダバーをクリックします。ハンドルのどちらか一方をクリックすると、その方向にスライダーが1 %移動します。
図10. Compensationツール。Compensationアイコンと、密度プロットにプロットを補正するスライダー(A)とSpillover値(B)を加えたもの。プロットは例示のためのイメージです。
注:Spilloverスライダーの値は、0~100 %の間です。この範囲外の調整値は、CompensationペインのSpilloverマトリックスに手動で入力する必要があります。
スケールとコンペンセーションを調整したら、データの解析準備が整いました。

図11. 調整後の目視確認。スケールおよびコンペンセーション調整後のすべての蛍光マーカーの組み合わせを可視化したもの。プロットは例示のためのイメージです。