なぜマシンラーニング解析なのか?

サイトメトリー分野における技術の進歩により、現在ではシングルセルレベルで多くのパラメータを同時に測定できるようになりました。データセットの次元数は増加しており、従来はパラメータ数が4~5色と少なかったものが、現在では10~20色を超えるパラメータが測定できる機器も展開されています。実験あたりのサンプルサイズもますます大きくなっており、イベント数もサンプルの数も増加しています。これにより、データ管理、共同研究、データの視覚的表現や解析が難しくなってきています。複雑性を増すデータを解析するための現実的な方法として、次元圧縮やクラスタリングといったマシンラーニングアルゴリズムツールが多数開発されています。

図1. フローサイトメトリーデータの2次元プロットとマシンラーニング解析の比較. (A)20色パネルのサイトメトリーデータのN x Nプロットの場合、プロットの数は190にもなります。(B)同じデータの24パラメータの情報をviSNE(またはt-SNE)マップで視覚化すると、ひとつのマップになります。

 

ゲーティングの人的主観性

細胞のサブグループをゲートしていくマニュアルゲーティングでは、ゲート設定の時の主観性がフローサイトメトリー研究のばらつきの原因であることはよく知られています1。大規模研究を行っているグループの中には、研究チームにゲーティングを専門に行う人を設けることで、この問題に対処しようとしているところもあります2。しかし、このアプローチは大規模に行うことが難しく、解析においてボトルネックとなってしまいます。フローサイトメトリー分野においては、人的主観性を排除できる解析方法が、次に来るイノベーションの波であると考えられています。

 

 

データの解析および解釈における課題

マルチカラーフローサイトメトリーを使用している研究者を対象に調査を行ったところ、回答者の半数以上が、課題としてデータ解析と解釈の2点を挙げました。研究アプローチとしてフローサイトメトリーを使用している研究者の多くは、すぐに利用できる解析ソフトウェアを使用していますが、その多くはマルチカラーフローサイトメトリーのデータセットが必要とする高度な要求に対応できるよう開発されたものではありません。
論文 A chromatic explosion: the development and future of multiparameter flow cytometryで著者らは、フローサイトメトリー技術の中で最も開発が遅れているのはデータ解析であると述べています3。そしてこの技術に、フローサイトメトリー分野を前進させ続けるための大きな可能性とニーズが存在しています。

Multicolor Flow Cytometry Survey
図2. マルチカラーフローサイトメトリーに関する調査。2019年12月に実施した調査では、フローサイトメトリーの研究者581名がデータ解析に関する話題に回答しました。(A)マルチカラーフローサイトメトリー実験において克服すべき課題はデータ解析または結果の解釈である、と答えた回答者の割合(B)マシンラーニング解析の経験レベルを示しており、49%がマルチカラーフローサイトメトリー実験でマシンラーニング解析を使用している、または使用する予定があると回答

Cytobankプラットフォームは、どなたでも使える包括的なデータ解析ワークフローを提供します。ウェブ対応であればどのデバイスでもクラウド上で解析を行うことができます。アルゴリズムは実装されているため、プログラミングやRスクリプトは不要です。ラーニングセンターのビデオやステップバイステップの説明資料で、Cytobankの使い始めをサポートします。オンラインのサポートサイトには、解説記事、ヒントやコツ、ご質問フォームを用意しています。

  

データ解析リソース

Cytobankラーニングセンター

Cytobankプラットフォームの概要に関するビデオ

 

参照文献

  1. Maecker HT, Rinfret A, D'Souza P, Darden J, Roig E, Landry C, et al. Standardization of cytokine flow cytometry assays. BMC Immunol 2005 Jun 24;6:13.

  2. Finak, Greg et al. “Standardizing Flow Cytometry Immunophenotyping Analysis from the Human ImmunoPhenotyping Consortium.” Scientific reports vol. 6 20686. 10 Feb. 2016, doi:10.1038/srep20686

  3. Chattopadhyay PK, Hogerkorp CM, Roederer M. A chromatic explosion: the development and future of multiparameter flow cytometry. Immunology. 2008;125(4):441–449. doi:10.1111/j.1365-2567.2008.02989.x