分光光度計誕生の物語
アーノルド・ベックマン博士は、友人のために開発したpHメータを製造するため、1935年、Beckman Instrumentsを創業します。そして1941年、第二次世界大戦の最中には、pHメータや機器の重要なパーツである高精度のポテンショメータを開発し製造していました。Beckman Instrumentsが特別に製造した直線性の優れたポテンショメータは、当時、米軍で開発されたばかりのレーダーを製造するために必須の重要部品であり、当時の最高品質を誇るものでした。この高性能なポテンショメータを基に開発された分析機が、世界初の分光光度計です。
この年の秋に発表されたDU型分光光度計は、この直線性に優れた精密ポテンショメータHelipotを採用し、飛躍的に定量性を向上させました。さらに、それまで不可能であった紫外域の光の吸収測定を可能とするクォーツ製のプリズム分光器や、紫外線用光源に重水素ランプの搭載、特別に開発された光電管PMTを使用しました。それまでの比色計や光度計と比べて、極めて測定精度の高い定量吸光分析装置の誕生です。(日本では、まもなく太平洋戦争開戦を迎える頃です。)
当時はビタミンに対する関心が高まっていた時代でした。米国は主要なビタミンであるビタミンAとビタミンDを、ヨーロッパから輸入される鱈の肝油から得ていましたが、第二次世界大戦の勃発とともにこの輸入が途絶え、新たなビタミンの資源が求められていたのです。Beckman InstrumentsのDU型分光光度計は、このビタミンの資源探索に大きな力を発揮し、薬品や食品分野の研究室に、驚異的な勢いで導入され、人々の健康維持に貢献しました。
名機DU型から始まったBeckman Instrumentsの分光光度計は、その後、微量サンプル測定に最適なマイクロフォーカスビーム技術を開発しました。DU 50シリーズ、DU 60シリーズで、分子生物学系研究室では不可欠な微量DNA定量分析装置として多くの研究者に親しまれるとともに、あらゆる分野で使用されるようになりました。その後を受け継いで開発されたDU 800、DU 600シリーズ、7000シリーズは、より進歩した世界標準機として長年皆様のご愛顧を受け続けました。