国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 創薬資源研究支援センター
創薬資源研究プロジェクト JCRB細胞バンク
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 創薬資源研究支援センター
創薬資源研究プロジェクト JCRB細胞バンク
セルカウンティング(細胞計数)は幅広い分野で実施されており、研究だけでなくその後に続く製品製造及び品質管理などにおいても重要な基礎データです。しかしながら、セルカウンティングの手法は様々であり研究者毎にその方法が異なります。近年企業間だけでなく国を超えた研究競争が激化し製品開発のスピード化が進む中、生死判定や細胞計数結果などにおいても高い精度や再現性が求められております。そこで、本インタビューでは、JCRB細胞バンクでのセルカウンティングの重要性やご研究における生死細胞の手作業カウントに関する課題、生死細胞自動セルカウンターの有用性についてお聞きいたしました。
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所は、独立行政法人医薬基盤研究所と独立行政法人国立健康・栄養研究所を統合して、平成27年(2015年)4月1 日に設立されました。これは、平成25年(2013年)に閣議決定された「独立行政法人改革に関する基本的な方針」による独立行政法人の見直しの一つとして、医薬品と食品等の専門性の融合による総合的な研究を推進させようとするものです。
具体的には、医薬品技術及び医療機器等技術に関し、医薬品及び医療機器等並びに薬用植物その他の生物資源の開発に資する共通的な研究、民間等において行われる研究及び開発の振興等の業務を行うことにより、医薬品技術及び医療機器等技術の向上のための基盤の整備を図るとともに、国民の健康の保持及び増進に関する調査、研究、国民の栄養その他国民の食生活に関する調査及び研究等を行うことにより、公衆衛生の向上及び増進を図り、もって国民保健の向上に資することを目的としており、右記の6つの事業や、健康増進法に基づく業務について行っております。
生命科学研究において培養細胞は、非常に有用な研究ツールとして利用されています。JCRB細胞バンクは厚生労働省の細胞バンクとして、疾患研究、創薬研究を支える重要細胞資源 を収集し、高品質な細胞を準備・提供しています。さらに、ヒト組織バンク、日本人由来B細胞株・DNAバンクを運営し、貴重なヒト由来試料を分譲しています。これらの活動により研究基盤整備に努め研究支援を実施しています。
血球計算盤(改良ノイバウエル型)や半自動のセルカウンターを使って細胞数計測を行っていました。
人因によるカウント誤差や、ロット間での再現性の低さ、作業量に対する研究への負荷などを感じていました。血球計算盤では安価に導入できるというメリットはありますが、セルカウント自体だけでなく、カウントのための前処理も含めて作業時間を確保する必要がありました。さらには測定者の主観的判断によっても結果が異なってしまう点も気になっていました。サンプル数が多い時には細胞認識のエラーや生死細胞判定エラーなどのヒューマンエラーが発生するリスクが高まってしまいます。
データをExcel 等に入力し解析しないといけない点も、エラーを起こさないように何度もデータを見直す必要があるなど、時間を要する原因となっていました。
少しでも作業効率を上げようと、「半自動セルカウンター」も導入していました。細胞のカウントは自動でできるため、血球計算盤に比べるとカウントは楽になりましたが、1サンプルごとに測定するためやはり時間を要していました。1サンプルごとに測定用のスライドガラスを作製するため、サンプル数が多いとやはり作業量は多くなっていました。また、同じサンプルを何度か測定しても、測定ごとに結果が変わりやすく、そのため再現性を担保するため同じサンプルで数回測定することもありました。測定回数が増えると結果的に作業量が増えてしまいました。半自動セルカウンターでも、データをExcel等に入力し解析しな
ければならず、測定しても煩雑な作業は残ったままでした。
当時、一日に100サンプル以上の細胞カウントを主に半自動セルカウンターを使ってカウントしていましたがサンプル調製の手間、再現性の問題、低濃度での細胞カウントが不可等の 問題がありました。自動セルカウンターの製品情報を色々集めていたところ、あるセルカウンター取扱いメーカーから「他社製品との比較評価をしていただけないか?」と相談を受け、他社メーカー含めセルカウント装置9台の評価することになりました。そのうちの一つがVi-CELL BLUでした。
トリパンブルー染色から自動で行える点、複数検体設置すれば連続測定ができる点が非常に楽でした。サンプル調製でトリパンブルー溶液と混ぜるのですが、それを人の手で行う必要がなく、手間がかからず簡単で楽に測定ができました。簡単に多検体測定が可能となり、細胞計測時に別の作業ができ、時間と労力が削減できるようになりました。細胞カウントに関する操作が前処理を含めてとても簡便になり、さらに人が作業する部分が少なくなったためヒューマンエラーがほとんどなくなりました。カウント結果が正確で再現性が良く、高濃度でも簡単に測定ができます。血球計算盤での測定と違い主観の排除ができるのは、データを扱う研究者としては安心できます。また、測定した細胞数、細胞の直径等のデータ取得が簡単にでき、Excel等へのデータ変換が簡単になりました。データの保存& データのエクスポート機能もありますので、必要なデータを簡単に使用することができます。21 CFR Part 11対応である点も、私達にとってはとても有難い点でした。デメリットとしては、やはり装置の初期費用が高く、また専用試薬が必要なため、ランニングコストも掛かってしまいます。選定の際には、メリット、デメリットを総合的に判断して導入することになりました。
データの信頼性が上がりました。測定者による主観や、測定ごとに結果が違うなどデータを扱う上で気になっていたことが解消され、再現性が上がったことでデータの信頼性が上がり、安心して測定することができるようになりました。また操作が楽で、サンプルセット後に別作業ができる点が一番の良さかもしれません。私達は96ウェルプレートで測定を行っていますが、プレートにサンプルを入れ、あとは装置にセットするだけで、他の業務をしようとその場を離れることができます。半自動セルカウンターでも、結局はサンプル数を全てカウントするまでは、ずっと装置の前で測定しなければなりませんでした。セルカウントだけが私達の業務ではありませんので、セルカウント自体は装置に任せて、他の業務ができるようになりました。データの取り出しも簡単で、解析もとても楽になりました。
創薬、再生医療分野等でスフェロイド、オルガノイド、組織等の細胞の塊の凍結に関するニーズはまだまだあり、それらの新規凍結法などの研究開発を今後も続けていきたいと考えています。
試薬の使用期限が短いのが、何とかしていただければと思います。使用期限を延長していただき、せめて1年間くらいは使用できると良いと思います。
装置に関しては、モニターが小さいため、もっと大きくするか、または外部モニターとの接続が可能にして欲しいです。私達は手袋で作業をするため、パネルタッチは使いづらく使っていません。マウスとキーボードを接続して使用していますが、画面やボタンが小さいため、クリックしづらいな、と思うことが多々あります。
また、サンプル入力が面倒なのでExcelに入力するように、同じ部分はセルを選択し下まで一気にコピー&ペーストができる・・・とさらに使いやすくなると思います。少数サンプル用の測定装置( 小型化) ができると、さらに用途が広がるのではないでしょうか。
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
Vi-CELL BLUは、生死細胞カウントにおける細胞染色から計数測定・生死判定、さらに装置の洗浄までを自動で行うセルカウンターです。再現性の高いセルカウントで、研究から製造の品質管理まで幅広くご利用いただいております。